法律コラム

2026年10月8日

タックスヘイブン対策と契約実務:租税回避と否認リスクを防ぐ

海外子会社を設けたり、国外のグループ会社との間でライセンス、融資、業務委託、販売・仕入れ等の取引を行ったりする場合、税負担の低い国・地域を利用しているという事実だけで直ちに違法な「租税回避」になるわけではありません。他方で、日本の外国子会社合算税制(CFC税制)、移転価格税制、支払利子に関する規制、租税条約の濫用防止規定などは、契約書の名称や形式だけではなく、実際の事業活動、意思決定、機能・資産・リスク、所得の性質を基礎に適用されます。

特にCFC税制について、「低税率国に子会社を置かなければ問題ない」「現地にオフィスと従業員がいれば合算されない」「契約書に現地子会社が独立して事業を行うと書けばよい」と理解するのは危険です。経済活動基準を満たしていても一定の受動的所得は部分合算の対象となり得ますし、反対に低税率国に所在することだけで当然に会社単位合算となるわけでもありません。

最初に押さえるポイント

現在の外国子会社合算税制は、単純な「タックスヘイブン国リスト」で判定する制度ではありません。会社の性質、経済活動基準、所得の種類、租税負担割合等を組み合わせて判定します。契約実務では、税務上の結論を契約文言だけで作ろうとせず、契約と実際の人員・意思決定・業務・資産・価格設定を一致させ、後から説明できる資料を残すことが重要です。以下は2026年9月時点の制度を前提に整理しています。

1 外国子会社合算税制は「低税率国に子会社があるだけ」では適用されない

外国子会社合算税制は、租税特別措置法66条の6以下に定められています。財務省は、実質的活動を伴わない外国子会社等を利用するなどして日本の税負担を軽減・回避する行為に対処する制度として説明しています。現在の制度は、外国子会社の所在地国だけで機械的に判定するのではなく、外国関係会社の性質、経済活動の実態、所得の内容、租税負担割合等を踏まえて会社単位又は所得単位で合算対象を判定する仕組みです。

そのため、社内で「この国はタックスヘイブンか」という問いだけを立てても十分ではありません。対象となる外国会社ごとに、株主関係、主たる事業、現地での事業運営、取引先、所得の内訳、現地法人税負担等を確認する必要があります。

誤解しやすい整理 実務上の考え方
低税率国の子会社はすべて合算される 所在地国だけで決まらず、会社の性質・経済活動基準・所得の種類・租税負担割合等を確認する
現地にオフィスがあれば適用されない 事務所等の有無だけでなく、管理支配や主たる事業、所在地国・非関連者基準等も問題になる
経済活動基準を満たせば何も合算されない 基準を全て満たしても、一定の受動的所得は部分合算の対象となり得る
契約書に独立会社と書けば実体が認められる 契約は重要な証拠の一つだが、実際の意思決定・人員・業務・資産・リスク負担と一致している必要がある

2 CFC税制では「会社単位合算」と「受動的所得の部分合算」を分けて考える

財務省の現行制度の整理では、外国子会社等がペーパー・カンパニー等に該当する場合や、経済活動基準のいずれかを満たさない場合には、一定の前提の下で外国子会社等の所得を会社単位で合算する仕組みがあります。一方、経済活動基準を全て満たす場合でも、配当、利子、有価証券取引、一定の保険所得、固定資産の貸付対価、無形資産等の使用料・譲渡損益などの受動的所得については部分合算の対象となり得ます。

また、事務負担への配慮として租税負担割合による適用免除があります。財務省の概要では、ペーパー・カンパニー等について27%以上、それ以外の外国子会社等について20%以上の場合には、外国子会社合算税制の適用が免除されると整理されています。これらは「税率が何%の国か」という表面税率だけではなく、法令上の租税負担割合により確認する必要があります。

判定の場面 主な確認 契約・証拠との関係
ペーパー・カンパニー等 会社の性質、資産・収入等に関する法定要件、租税負担割合 設立目的だけでなく、資産構成・収益・実際の活動を資料で確認する
経済活動基準を満たさない会社 事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準 契約書だけでなく、人員・オフィス・意思決定・取引先・業務記録を確認する
経済活動基準を満たす会社 受動的所得に該当する所得の有無・金額 ライセンス、融資、資産貸付等の契約と会計・税務上の所得区分を一致させる

3 経済活動基準は4つの観点を一体で確認する

外国子会社合算税制の経済活動基準は、財務省の整理では、①事業基準、②実体基準、③管理支配基準、④所在地国基準又は非関連者基準から構成されます。どれか一つだけを満たせばよいというものではなく、対象会社の主たる事業や業種に応じて必要な基準を確認します。

基準 概要 実務で確認したい資料・事実
事業基準 主たる事業が株式保有等の一定の事業でないことなどを確認する 事業計画、売上構成、契約類型、収益源、保有資産
実体基準 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有することを確認する 賃貸借、設備、現地拠点、実際の利用状況
管理支配基準 本店所在地国で事業の管理・支配・運営を自ら行っているかを確認する 取締役会議事録、決裁権限、役員・従業員、銀行権限、重要契約の承認経路
所在地国基準/非関連者基準 主として所在地国で事業を行うか、一定業種では主として非関連者と取引するかを確認する 顧客・仕入先一覧、売上先、取引地域、関連当事者取引割合

契約書は「実体を作る」ものではない

契約書に現地子会社が独立して業務を行うと記載しても、重要な意思決定を日本親会社が事実上行い、現地側に人員・権限・業務がないのであれば、契約文言だけで税務上の実体を補うことはできません。反対に、実際に現地で事業運営していても、契約・議事録・権限規程・請求書等が実態と食い違えば説明が難しくなります。

4 2025年度・2026年度改正も確認する

外国子会社合算税制は近年も見直しが続いています。2025年度税制改正では、外国関係会社の課税対象金額等を日本の内国法人の所得へ合算する時期が、外国関係会社の事業年度終了日の翌日から原則4か月を経過する日を含む内国法人の事業年度へ後ろ倒しされ、申告時に添付・保存を求める書類の一部も見直されました。

さらに2026年度税制改正では、解散した部分対象外国関係会社・外国金融子会社等に関する特例、ペーパー・カンパニー特例の資産割合要件の一部簡素化、累進税率国における最高税率を用いた租税負担割合計算の特例の制限などが行われています。これらは、外国関係会社の2026年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。

改正時期 主な内容 実務への影響
2025年度 合算時期を原則2か月から4か月へ後ろ倒し、一定の添付・保存書類を削減 決算・申告スケジュールと海外子会社からの情報回収期限を見直す
2026年度 清算中の部分対象外国関係会社等に関する特例、ペーパー・カンパニー特例等の見直し 海外子会社の解散・清算や事業撤退でもCFC判定を継続して確認する

海外子会社の設立時に一度だけCFC判定をして終わりにせず、事業内容・所得構成・税率・組織再編・解散等の変化に応じて毎期確認する体制が必要です。

5 契約実務では「機能・資産・リスク」と実際の運営を一致させる

国際的なグループ内取引では、契約上どの会社が何を行い、どの資産を使い、どのリスクを負うのかを明確にすることが重要です。ただし、税務上は契約書に書かれた役割だけでなく、実際に各社が果たしている機能や意思決定も確認されます。

契約で明確にしたい事項 実際に一致させたい運用
業務範囲・成果物 現地従業員が実際に行う営業、開発、管理、サポート等と一致させる
意思決定権限 価格、顧客、仕入れ、採用、投資等の承認権限と取締役会・決裁運用を一致させる
知的財産の利用・管理 ライセンス範囲、改良、維持管理と、実際の開発・管理機能を一致させる
リスク負担 在庫、信用、製造、為替、市場等のリスクを誰が管理し、負担しているかを明確にする
対価・価格調整 算定方法、費用負担、期末調整、通貨等を移転価格ポリシーと整合させる

とくに、現地会社の役割を「販売会社」「サービス会社」「IP保有会社」などと契約上定義していても、実際の機能が異なれば、CFCだけでなく移転価格税制や現地税務の論点にもつながります。

6 移転価格税制はCFC税制とは別に確認する

CFC税制は外国子会社等の所得を日本側へ合算する制度であり、国外関連者との取引価格が適正かを確認する移転価格税制とは別の制度です。国税庁は、移転価格税制について、国外関連者との取引価格が独立企業間価格と異なることによって日本の課税所得が減少している場合に、その取引を独立企業間価格で行ったものとみなして所得を計算する制度と説明しています。

したがって、外国子会社がCFC税制の会社単位合算を受けないからといって、親子会社間のロイヤルティ、利息、サービスフィー、仕入価格等がそのまま認められるとは限りません。契約価格の決め方と、各社の機能・リスク・資産を踏まえた移転価格分析を別途行います。

一定の国外関連取引ではローカルファイル等の文書化も問題になります。契約書に「独立企業間価格で取引する」とだけ書くのでは足りず、価格設定方法、比較対象、費用配賦、利益水準等を裏付ける資料を保存することが重要です。継続的で重要な取引については、必要に応じてAPA(独立企業間価格の算定方法等の事前確認)も検討対象になります。

7 租税条約を使えばCFCや否認リスクがなくなるわけではない

租税条約は、源泉税率の軽減、恒久的施設(PE)に関する課税関係、二重課税の調整等に重要ですが、条約を利用するだけで外国子会社合算税制が自動的に免除されるわけではありません。CFC税制の判定と、個々の支払について租税条約上の特典を受けられるかは分けて確認する必要があります。

また、日本が締結する租税条約の中には特典条項を有するものがあり、条約特典を受けるための資格確認が必要です。BEPS防止措置実施条約(MLI)により、対象となる租税条約には主要目的テスト(PPT)などの濫用防止規定が導入される場合があります。条約上の軽減税率を前提に契約価格を決める場合は、相手方の居住者性、受益者・特典資格、届出手続、MLIによる修正の有無まで確認します。

「条約適用」と「税務上安全」は同義ではない

源泉税の軽減を受けられること、CFC税制の合算対象にならないこと、移転価格上の価格が妥当であることは、それぞれ別の判定です。一つの要件を満たしたことをもって、国際税務全体が問題ないと判断しないことが重要です。

8 国際契約で税務リスクを管理する条項

契約書だけで税務上の結論を確定することはできませんが、税務前提が崩れたときの当事者間リスクを整理し、調査対応に必要な情報を確保するため、国際契約では税務に関する条項設計が重要です。

条項・事項 実務上のポイント
税負担・源泉徴収 誰が源泉徴収し、条約軽減を申請するか、税負担を価格に含めるかを明確にする
Gross-up 源泉税が発生した場合に支払額を増額するか。適用範囲・除外・条約手続への協力条件を定める
価格設定・調整 移転価格ポリシーとの整合、期末調整、過年度修正、通貨・為替の扱いを定める
情報提供・協力 税務申告、調査、相互協議等に必要な契約・請求・原価・機能情報を相互提供できるようにする
法令・税制変更 税率・条約・CFC・源泉・現地規制の変更時に価格・スキームを再協議する仕組みを置く
表明・補償 税務上の居住者性、必要な届出、既存の税務債務等について、取引類型に応じて確認・補償範囲を定める

Gross-upや税務補償は、一方当事者へ無限定に税負担を移転すると紛争になりやすいため、相手方の手続懈怠、条約適用に必要な書類の未提出、法令変更など原因ごとに扱いを分ける方が実務的です。

9 IP・融資・サービス取引は「所得の性質」と価格設定を確認する

海外グループ会社との間で、知的財産の使用許諾、グループ内融資、保証、経営管理サービス、研究開発サービス等を行う場合、CFC税制では所得の種類が受動的所得に該当するかが問題となり得る一方、移転価格税制では対価の水準や各社が果たす機能が問題になります。さらに、利息については過少資本税制や過大支払利子税制が関係する場合もあります。

そのため、「現地会社へ利益を残したい」「ロイヤルティ率を○%にしたい」という結論から契約を逆算するのではなく、まず事業上の役割・権利・リスクを決め、その上で税務上の価格・所得区分を検討する順序が重要です。

取引類型 契約上の主な確認 税務上の主な確認
ライセンス 対象IP、地域、用途、再許諾、改良、維持管理、侵害対応 使用料の所得区分、移転価格、源泉税、条約特典、CFCの受動的所得
グループ内融資 元本、利率、期間、担保、期限の利益、通貨 独立企業間利率、過少資本・過大支払利子、源泉税、CFC
サービス 業務内容、成果、担当者、費用負担、再委託 便益の有無、マークアップ、原価配賦、移転価格、PEリスク
販売・仕入れ 販売地域、在庫、返品、価格決定、マーケティング 移転価格、機能・リスク、所在地国/非関連者基準との関係

10 グローバル・ミニマム課税とCFC税制は別制度として整理する

大規模な多国籍企業グループでは、外国子会社合算税制に加えてグローバル・ミニマム課税も問題になります。財務省の2026年度資料では、年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループを対象に、一定の適用除外を除く所得について国・地域ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組みとされ、日本では所得合算ルール(IIR)が2024年4月から、軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)が2026年4月から施行されています。

グローバル・ミニマム課税が導入されたからCFC税制がなくなったわけではありません。両制度は対象・計算・申告が異なり、2025年度・2026年度には両者の併存を前提にCFC税制の見直しも行われています。大規模グループでは、CFC、移転価格、グローバル・ミニマム課税を別々の担当者が計算して矛盾が生じないよう、基礎データと法人一覧を共通化することが重要です。

11 「実体があるから安全」とは言い切れない

国際税務では、経済実体は重要な要素ですが、それだけで全ての課税リスクが解消するわけではありません。CFC税制の受動的所得の部分合算、移転価格税制、支払利子に関する規制、租税条約の濫用防止規定などは、それぞれ別の要件で適用されます。取引の内容によっては、法人税法132条や132条の2等の行為又は計算の否認規定が問題となる場面もあります。

参考裁判例:最高裁平成28年2月29日判決

最高裁平成28年2月29日判決は、組織再編成に係る法人税法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」について、組織再編税制の各規定を租税回避の手段として濫用して税負担を減少させる場合をいうとしました。濫用の有無は、①通常は想定されない手順・方法や実態と乖離した形式を作出するなど不自然な行為・計算か、②税負担の減少以外に合理的な事業目的その他の理由があるかなどを考慮し、組織再編税制の規定の本来の趣旨・目的から逸脱する態様で適用を受け、又は免れるものかという観点から判断するとしています。

同判決の事案では、買収後の適格合併で多額の繰越欠損金を引き継ぐための要件を満たすことを意図し、買収会社の代表取締役社長が買収対象会社の取締役副社長に短期間就任していました。しかし、その者は代表権のない非常勤取締役で、具体的な権限を伴う専任業務もなく、役員報酬も受けていませんでした。最高裁は、この就任が特定役員引継要件に想定される実質を備えず、実態と乖離した形式を作出する明らかに不自然なもので、税負担の減少以外の合理的な事業目的も認め難いとして、132条の2による否認を認めました。

参考裁判例:東京高裁令和7年7月23日判決

これに対し、東京高裁令和7年7月23日判決は、グループ内の合併により繰越欠損金を引き継いだ事案について、法人税法132条の2による否認を認めませんでした。同判決は、税負担の減少目的とそれ以外の事業目的を区別する必要はあるものの、税負担減少目的が他の事業目的より少しでも重ければ直ちに不当性要件を満たすとはいえず、税負担軽減額の多寡だけで結論を出すこともできないとしています。

本件では、合併の時期や相手方の選択に合理性があり、買収後の事業をグループ内で統合・集中管理するビジネスモデルにも事業上の合理性が認められました。また、繰越欠損金のある会社を買収して結果的に欠損金を引き継いだことや、複数段階の合併を行ったことだけで、直ちに組織再編税制の濫用に当たるものではないと判断しています。

両判決を踏まえると、税負担を軽減する効果や意図があることだけで否認の結論が決まるわけではありません。取引の手順や形式が実態から不自然に乖離していないか、税務上の効果を除いても説明できる事業上の目的・合理性があるか、制度の趣旨・目的に沿った利用といえるかを、事前に検討し、その根拠を契約・議事録・事業計画等で残すことが重要です。

したがって、税務リスクを下げるために重要なのは、形式だけを追加することではなく、①事業上の合理的な目的、②実際の機能・人員・意思決定、③契約と実態の一致、④独立企業間価格等の根拠、⑤条約・申告・届出の手続、⑥継続的な制度改正の確認を一体で行うことです。

12 海外子会社について毎期そろえたい資料

CFC税制や移転価格税制への対応では、税務調査が始まってから「現地に実体があります」と説明するのではなく、通常の事業運営の中で資料を残すことが重要です。

資料・情報 確認できること
株主・組織図、法人一覧 外国関係会社の範囲、グループ関係、持株構造
現地法人の決算・税務申告・納税資料 所得構成、現地税負担、租税負担割合の計算前提
取締役会・経営会議・決裁記録 管理支配、意思決定者、重要事項をどこで決めているか
従業員一覧・職務内容・給与資料 現地で実際に行う機能、人員配置、管理体制
事務所・設備・銀行権限 事業に必要な物的実体、資金管理の所在
顧客・仕入先・関連者取引一覧 所在地国基準・非関連者基準、移転価格の取引範囲
グループ内契約・請求書・価格算定資料 契約内容と実際の取引、独立企業間価格の根拠
IP・融資・配当等の所得明細 受動的所得の部分合算や源泉・条約論点

弊所の実務上の視点

国際取引では、契約書を税務調査向けに「強く見せる」より、実際の業務フローと契約を揃える方が重要です。親会社が実際には全てを決めているのに現地会社へ広い裁量があるように書くと、税務だけでなく契約責任やガバナンスの面でも矛盾が生じます。まず実際の権限・業務・リスクを図にし、その内容を契約、議事録、価格設定資料へ一貫して反映させることを勧めます。

13 よくある対応ミス

ミス 問題点 改善策
「低税率国か」だけでCFCを判定する 会社単位合算・部分合算・経済活動基準・租税負担割合を見落とす 会社ごとにCFC判定表を作り、所得構成まで確認する
現地オフィスだけ用意する 管理支配や主たる事業、取引実態が日本側に残れば説明が不十分 人員、権限、意思決定、顧客、資産まで実態を確認する
契約書の文言で実体を作ろうとする 契約と実態の不一致が税務・法務双方のリスクになる 実際の業務フローを先に整理し、契約を合わせる
CFC対象外なら移転価格も問題ないと考える 国外関連取引の価格は別制度で検証される 契約価格と移転価格文書を整合させる
租税条約の軽減税率を当然の前提にする 特典資格・届出・PPT等で特典を受けられない場合がある 条約・MLI・届出要件を支払前に確認する
設立時の判定を更新しない 税率・所得・事業・組織再編・清算で結果が変わる 毎期の決算プロセスにCFC・国際税務チェックを組み込む

14 国際税務・契約実務チェックリスト

  • 海外子会社ごとに株主関係と外国関係会社該当性を確認した
  • ペーパー・カンパニー等への該当可能性を確認した
  • 事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準を確認した
  • 受動的所得の内訳を確認し、部分合算の可能性を検討した
  • 租税負担割合について27%・20%の適用免除基準との関係を確認した
  • 2025年度・2026年度改正の適用時期を確認した
  • 契約上の機能・権限・リスクが実際の業務運営と一致している
  • 関連者間の価格設定を移転価格ポリシー・ローカルファイル等と一致させた
  • 利子・使用料・サービス料等の源泉税と租税条約の適用を確認した
  • 条約特典を受けるための特典条項・居住者証明・届出等を確認した
  • MLIにより対象租税条約が修正されていないか確認した
  • 情報提供、税務調査協力、Gross-up、税制変更条項を契約で整理した
  • 現地の決算、税務申告、議事録、従業員、事務所、取引先等の証拠を保存した
  • 大規模グループの場合はグローバル・ミニマム課税との関係も確認した
  • 海外子会社の解散・清算・組織再編でもCFC判定を継続して確認する体制がある

15 FAQ

Q. 低税率国に子会社を作ると、それだけで租税回避と認定されますか?

A. いいえ。所在地国や税率だけで直ちに違法な租税回避と決まるものではありません。ただし、外国子会社合算税制は会社の性質、経済活動基準、所得の種類、租税負担割合等により適用されるため、設立目的や実際の事業活動を含めて確認する必要があります。

Q. 現地に従業員とオフィスがあればCFC税制は適用されませんか?

A. 一律にはいえません。実体基準だけでなく、事業基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準も確認します。また、経済活動基準を満たしていても一定の受動的所得は部分合算の対象となり得ます。

Q. 契約書に現地子会社が独立して事業を行うと書けば十分ですか?

A. 十分ではありません。契約は重要な証拠ですが、実際の意思決定、人員、顧客、資産、リスク負担、銀行権限等と一致している必要があります。契約と実態が異なる場合は、その不一致自体が説明上の問題になります。

Q. CFC税制の対象外なら、親子会社間の価格は自由に決められますか?

A. いいえ。国外関連者との取引価格については移転価格税制が別に適用されます。ロイヤルティ、サービス料、利息、仕入価格等について、独立企業間価格の観点から根拠を準備する必要があります。

Q. 租税条約がある国ならCFC税制は免除されますか?

A. 租税条約があることだけで外国子会社合算税制が自動的に免除されるわけではありません。CFC判定と、源泉税等について条約特典を受けられるかは別に確認します。

Q. CFC税制は租税負担割合20%未満なら必ず適用されますか?

A. 一律ではありません。20%又は27%は現行制度上の適用免除基準に関係しますが、会社の性質、経済活動基準、受動的所得等を含めて全体を判定します。表面税率だけで結論を出さないことが重要です。

Q. グローバル・ミニマム課税が始まったのでCFC対策は不要ですか?

A. いいえ。両者は別制度です。グローバル・ミニマム課税は一定規模以上の多国籍企業グループを対象とする一方、CFC税制は別の要件で適用されます。大規模グループでは両制度を並行して確認します。

Q. 海外子会社を清算すればCFC税制の確認は終わりますか?

A. 必ずしもそうではありません。2026年度改正では、解散した部分対象外国関係会社・外国金融子会社等に関する特例も設けられています。清算期間を含め、適用事業年度と所得を確認する必要があります。

16 弁護士・税理士へ早めに相談したい場面

  • 海外子会社を新設し、機能・人員・意思決定権限を設計する
  • 低税率国・地域の子会社で配当、利子、使用料、資産運用等の所得が増えている
  • 親子会社間のライセンス、融資、サービス、販売契約を新設・変更する
  • 移転価格ポリシーと実際の契約価格・費用配賦がずれている
  • 租税条約の軽減税率やGross-upを前提に契約条件を決める
  • 海外子会社の機能移転、IP移転、組織再編、解散・清算を予定している
  • 税務調査で現地子会社の実体、価格設定、条約適用等について説明を求められている
  • グローバル・ミニマム課税の対象となる大規模グループで、CFCとのデータ整合を図る必要がある

国際税務では、契約締結後や税務調査開始後に事業実態を作り直すことはできません。特に海外子会社の役割、決裁権限、価格設定、IP・資金の配置などは後から変更すると別の税務問題が生じることもあるため、スキームをまだ変更できる段階で法務・税務を同時に確認することが重要です。

まとめ CFC対策は「契約書」ではなく、制度判定・実体・価格・証拠を一体で管理する

外国子会社合算税制は、低税率国の子会社を一律に否認する制度ではありません。ペーパー・カンパニー等への該当性、経済活動基準、受動的所得、租税負担割合等を組み合わせて判定する制度であり、実体のある事業会社であっても所得の内容によって部分合算が問題となることがあります。2025年度・2026年度にも制度改正が続いているため、古い「タックスヘイブン税制」の説明だけで判断するのは危険です。

契約実務では、現地会社の役割、意思決定、資産、リスク、価格設定を契約上明確にしつつ、実際の運営をそれに一致させます。同時に、移転価格、源泉税・租税条約、利子規制、グローバル・ミニマム課税等を別論点として確認し、議事録、税務申告、価格算定、取引記録を保存しておくことが、税務調査やM&A・IPOのデューデリジェンスにおける説明可能性につながります。

17 参考裁判例

最高裁平成28年2月29日判決(平成27年(行ヒ)第75号)

東京高裁令和7年7月23日判決(令和6年(行コ)第321号)

18 主要な一次資料

租税特別措置法(昭和32年法律第26号)— e-Gov法令検索

法人税法(昭和40年法律第34号)— e-Gov法令検索

財務省「外国子会社合算税制の概要」

財務省「令和7年度税制改正の大綱(国際課税)」

財務省「令和8年度税制改正の大綱(国際課税)」

国税庁「移転価格事務運営要領」

国税庁「国別報告事項、事業概況報告事項及びローカルファイル」

国税庁「移転価格税制に関する事前確認の申出及び事前相談について」

国税庁 No.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」

国税庁 No.2891「BEPS防止措置実施条約の概要」

財務省「BEPS防止措置実施条約に関する資料」

財務省「令和8年度 税制改正(国税)等について」

国際税務・海外子会社・国際契約に関するご相談

海外子会社の設立・運営、グループ内契約、CFC税制を踏まえた契約実務、移転価格・租税条約が関係する国際取引など、法務と税務をまたぐ案件について、必要に応じて税理士等と連携しながら契約・ガバナンス・紛争予防の観点から整理します。

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