労務・人事法務

2026年9月23日

外国人労働者雇用と入管法の留意点:在留資格・契約実務を徹底解説

外国人を採用するときは、「在留カードを見たから大丈夫」「就労できる在留資格だからどの仕事でも任せられる」と考えるのは危険です。企業側では、①その人が就労できる在留資格を有しているか、②自社で予定する具体的な業務がその在留資格で認められているか、③雇用後も在留期限・業務内容・届出・労働条件を適切に管理できるか、という三段階で確認する必要があります。

厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によれば、2025年10月末時点の外国人労働者数は2,571,037人、外国人を雇用する事業所数は371,215所で、いずれも届出義務化以降で過去最多となっています。外国人雇用は一部の企業だけの特殊なテーマではなく、人事・労務管理の通常業務として扱う必要性が高まっています。

さらに、2026年6月14日から新様式の在留カードの交付が始まり、在留カード等読取アプリケーションも更新されています。また、2027年4月1日には技能実習制度を発展的に解消して育成就労制度が開始され、不法就労助長罪の法定刑も引き上げられる予定です。2026年9月現在、外国人雇用の社内ルールは、これらの変更を見据えて見直す時期にあります。

本稿では、外国人を採用・雇用する企業が、採用前の在留資格確認、雇用契約、配属・異動、在留期限管理、外国人雇用状況の届出、退職時対応まで、どのような順序で確認すべきかを実務の流れに沿って整理します。

1.この記事が対象とする企業・担当者・場面

この記事は、次のような企業・担当者を主な対象としています。

  • 外国人を正社員・契約社員として初めて採用する
  • 外国人留学生を新卒採用し、「留学」から就労資格への変更を予定している
  • 「技術・人文知識・国際業務」の社員を採用・配置転換したい
  • 留学生・家族滞在のアルバイトを採用したい
  • 特定技能外国人を受け入れる、又は登録支援機関へ支援を委託したい
  • 技能実習生を受け入れており、2027年4月開始の育成就労制度への移行準備を進めたい
  • 在留カードの確認方法や更新期限の管理方法を統一したい
  • 外国人雇用状況の届出を誰がいつ行うのか明確にしたい
  • 外国人社員の異動・職種変更が在留資格上問題ないか確認したい
  • 退職・解雇・雇止め時の労働法と入管法上の手続を整理したい

2.外国人雇用では「在留資格」と「実際の業務内容」をセットで確認する

外国人雇用で最も基本となるのは、在留資格の名称だけを見るのではなく、その在留資格で認められている活動と、自社で実際に担当してもらう業務を照合することです。

在留資格は、大きく見ると、身分・地位に基づき就労活動の制限がないもの、一定の専門的・技術的活動等に限って就労できるもの、個別の指定内容に従うもの、原則として就労を目的としないものに分けて整理できます。

区分主な在留資格の例採用時の確認ポイント
就労活動の制限がない永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等原則として職種による就労制限はない。ただし通常の労働法令・資格法等は別途確認する
活動内容に応じて就労できる技術・人文知識・国際業務、高度専門職、介護、技能、企業内転勤等在留資格で認められる活動と、自社の具体的業務が一致しているか確認する
制度上の要件・受入れ体制が必要特定技能、技能実習雇用契約だけでなく、分野要件、支援・届出、受入れ体制等を確認する
個別指定の内容による特定活動旅券等に添付された指定書の内容まで確認する
原則として就労目的ではない留学、家族滞在資格外活動許可の有無、許可範囲、時間制限等を確認する

「就労可」とだけ記録して終えると、後で配属が変わったときに在留資格との不整合を見落としやすくなります。採用時点で「在留資格」「就労制限」「資格外活動許可」「担当業務」をセットで記録しておくことが重要です。

3.採用前に確認するべき在留カードのポイント

厚生労働省は、外国人雇用状況の届出に際し、在留カード又は旅券等の提示を求め、届出事項を確認するよう案内しています。採用可否の判断では、単にカードのコピーを受け取るのではなく、本人が提示した原本と、就労に必要な情報を確認します。

確認項目見る場所・資料実務上の注意
氏名・本人確認在留カード・旅券応募書類や雇用契約書の氏名表記と一致するか確認する
在留資格在留カード在留資格の名称だけでなく、予定業務との対応関係を確認する
在留期間の満了日在留カード期限管理台帳へ登録し、更新の確認時期を事前に設定する
就労制限の有無在留カード「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」等の記載を確認する
資格外活動許可在留カード裏面、許可書等留学・家族滞在等のアルバイトでは、許可内容と時間制限を確認する
カードの有効性・真正性読取アプリ、失効情報照会券面だけで判断せず、必要に応じて公式ツールを併用する

在留カードの写しを外国人雇用状況の届出に添付する必要はありません。社内で写しを保存する場合には、利用目的、アクセス権限、保存期間等を整理し、必要以上の情報を扱わないようにします。また、厚生労働省の外国人雇用管理指針は、事業主が外国人労働者の旅券や在留カード等を保管しないよう求めています。原本を会社で預かる運用は避けるべきです。

3-1.裁判例:旅券原本を雇用継続の拘束手段にしない

横浜地裁令和6年4月25日判決(令和2年(ワ)第144号、同第1086号)は、外国人労働者との間で、パスポートを使用者側が管理し、利用には許可を要し、保管期限も使用者側が決めるなどとする契約が問題となった事案です。裁判所は、パスポートは国外でも通用する身分証として重要な文書であり、その管理を第三者へ委ねるには所有者の自発的な自由意思が必要で、仮に預かりを開始したとしても、本人から返還を求められた場合には直ちに返還される必要があるとしました。

本件の契約では、在職中の使用に許可を要すること、保管期限を使用者側が決定すること、退職後も管理すること、一定の場合に使用者の許可がなければ返還しないことなどが定められていました。裁判所は、これらが外国人労働者の移動の自由を制限するものとして公序良俗に反するとし、返還要求後にパスポートを返さなかったことについて不法行為責任を認めました。

また同判決は、在留資格変更手続の報酬のうち40万円について、「1年間継続勤務し、勤務態度が良好であれば支払を免除する」という仕組みは、実質的に雇用を継続させるための違約金であるとして、労働基準法16条に反し無効と判断しています。実務上は、在留資格手続のため一時的に旅券等を預かる必要がある場合でも、目的・期間を限定し、本人が返還を求めれば速やかに返す運用にすること、また、手続費用を退職抑止の違約金として機能させないことが重要です。

4.2026年6月以降の新様式在留カードと確認実務

2026年6月14日から新様式の在留カード等の交付が開始されています。出入国在留管理庁は、在留カード等読取アプリケーションを新様式に対応させ、2026年8月19日の更新では、新様式カードについて「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」も表示できるよう改修しています。

新旧のカードが併存する時期は、人事担当者が「見慣れないカードだから偽物ではないか」と誤認したり、逆に券面だけを見て真正性確認を省略したりすることが起こり得ます。採用担当者には、新様式の存在と、公式の読取アプリ・失効情報照会の使い方を周知しておくと安全です。

公式アプリを使用するときも、本人の同意を得て在留カードの提示を受けることが前提です。外国人であることを理由に必要以上の個人情報を収集するのではなく、雇用管理・届出・適法就労確認に必要な範囲で確認する運用にします。

5.「技術・人文知識・国際業務」は職種名ではなく実際の活動内容で確認する

企業で採用機会が多い「技術・人文知識・国際業務」は、いわゆるホワイトカラー職なら何でも認められる在留資格ではありません。従事予定の業務が、自然科学・人文科学の分野の技術・知識を必要とする業務、又は外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に該当するかを確認します。

出入国在留管理庁は、大学・専修学校等での専攻と従事予定業務との関連性、実務経験、報酬等の上陸許可基準を示しています。また、入社当初の実務研修として在留資格に直接該当しない作業を行う場合でも、将来の対象業務に必要な研修であり、日本人社員にも同様の研修が行われるなど、一定の事情があれば許容される場合があると整理しています。

一方、「最初は企画職として採用したが、人手不足のため恒常的に倉庫作業だけを担当させる」「通訳採用の社員を実質的に接客・清掃だけに従事させる」といった運用では、在留資格と実態の不一致が問題となり得ます。人事異動・組織変更のときは、労務上の異動権限だけでなく、入管法上その業務を行えるかという確認を加えることが重要です。

なお、出入国在留管理庁は2026年4月15日に「技術・人文知識・国際業務」の取扱いを一部更新し、翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に関する資料等も追加しています。判断が微妙な職種では、古い社内基準だけで結論を出さず、最新の入管庁資料を確認します。

6.留学生・家族滞在のアルバイトは資格外活動許可と時間数を確認する

「留学」「家族滞在」は、それ自体が一般的な就労を認める在留資格ではありません。アルバイト等を行うには、原則として資格外活動許可が必要です。包括的な資格外活動許可では、原則として1週28時間以内という制限が設けられています。

企業側では、在留カード裏面の資格外活動許可欄や許可書等を確認し、許可の有無だけでなく許可内容も確認します。複数の勤務先がある場合、時間制限を自社だけで見てよいとは限らないため、本人から他の就労状況を申告してもらう運用も検討します。

また、資格外活動許可があっても、風俗営業等の一定の場所・業務では就労できません。「28時間以内なら何でもできる」と説明しないよう注意が必要です。

7.特定技能では「雇用契約+支援+分野要件」を一体で管理する

特定技能は、通常の労働契約を締結すれば受入れが完了する制度ではありません。特定技能所属機関に関する基準、各分野の基準、届出、そして1号特定技能外国人については支援計画の作成・実施等が必要です。

出入国在留管理庁は、1号特定技能外国人について、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応、定期面談等を含む義務的支援を示しています。支援の全部を登録支援機関へ委託することもできますが、委託したからといって雇用主としての労働法上の責任まで外部へ移るわけではありません。

特定技能の対象分野・業務区分・分野別基準は改正が続いています。採用時には「以前この職種で特定技能を採ったことがある」という経験だけで判断せず、採用時点の分野別情報と運用要領を確認します。

8.技能実習から育成就労へ:2027年4月1日の制度変更を見据える

技能実習制度は、2027年4月1日から開始する育成就労制度への移行が予定されています。育成就労制度は、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成するとともに、人材を確保することを目的とする制度です。

2026年9月1日からは育成就労計画の認定に係る施行日前申請が始まっています。現在技能実習生を受け入れている企業、2027年以降に新たな受入れを予定している企業は、「技能実習の延長」と捉えるのではなく、受入れ分野、育成就労計画、監理支援機関、転籍、待遇・人材育成等の新制度の要件を確認する必要があります。

もっとも、2027年4月1日にすべての技能実習が一斉に終了するわけではなく、施行日前の技能実習計画や来日時期等に応じた経過措置があります。個別の受入れ計画では、どの制度が適用されるかを時系列で確認してください。

9.外国人にも日本の労働法・社会保険法令が原則として適用される

外国人であることを理由に、労働基準法や最低賃金法等の適用が外れるわけではありません。厚生労働省の外国人雇用管理指針は、国籍にかかわらず労働関係法令・社会保険関係法令が適用されることを明示しています。労働基準法3条も、国籍を理由とする賃金・労働時間その他の労働条件の差別的取扱いを禁止しています。

したがって、「在留資格の取得を会社が支援している」「住居を用意している」といった事情があっても、最低賃金、割増賃金、労働時間、年次有給休暇、安全衛生、労災、解雇・雇止め等のルールを軽視することはできません。食費・住居費等を賃金から控除する場合も、法令・労使協定等の要件を確認し、不当に高額な控除にならないようにします。

10.労働条件は「書面を渡したか」だけでなく、理解できる方法で説明する

労働基準法15条に基づき、使用者は労働契約の締結に際して労働条件を明示する必要があります。外国人雇用管理指針は、モデル労働条件通知書やモデル就業規則を活用し、母国語その他本人が使用する言語又は平易な日本語を用いるなど、外国人労働者が理解できる方法で明示するよう努めることを求めています。

実務では、給与額だけでなく、固定残業代の有無・内容、控除項目、賞与、契約期間、更新基準、勤務地、業務内容、異動可能性、試用期間、退職・解雇、住居費や渡航費の負担等について、認識のずれが生じないようにします。国外から採用する場合には、来日前の説明と入社時の契約内容が一致しているかも重要です。

外国語版を作成する場合は、日本語版と外国語版で内容が食い違わないよう版管理を行います。「外国語版は参考訳」とする場合でも、重要な労働条件を本人が理解できないまま署名だけ求める運用は避けるべきです。

11.雇用契約に入れておきたい在留資格関連の確認事項

外国人社員の雇用契約では、通常の労働条件に加え、在留資格と就労許可に関する協力事項を明確にしておくと、更新・異動時の確認がしやすくなります。

① 採用予定の職務内容と勤務地を具体的に記載する

② 就労に必要な在留資格・許可を適法に有することを採用・就労開始の前提として確認する

③ 在留期間・資格外活動許可等に変更があった場合の速やかな報告を求める

④ 在留期間更新・資格変更等の必要手続について、本人と会社の担当範囲を決める

⑤ 配置転換・職務変更を行う場合に、在留資格上の確認を経る社内フローを設ける

⑥ 外国人雇用状況の届出その他会社が行う法定手続に必要な情報提供を求める

ただし、在留資格に関する問題が生じた場合に「当然退職とする」と一律に処理できるとは限りません。雇用契約の終了は労働法上の問題でもあるため、更新不許可、資格変更、就労不能等の具体的事情に応じて、契約上の根拠と解雇・休業等の法的問題を別途検討する必要があります。

12.外国人雇用状況の届出は、入管への届出と混同しない

事業主には、労働施策総合推進法28条に基づき、原則として外国人を雇い入れたときと離職したときに、氏名、在留資格、在留期間等を確認し、厚生労働大臣へ届け出る義務があります。実務上はハローワークへ届出を行います。特別永住者や「外交」「公用」の在留資格の者は対象外です。

届出の場面対象・方法主な期限
雇用保険の被保険者となる外国人の雇入れ雇用保険被保険者資格取得届と併せて必要事項を届出原則として雇入れ日の属する月の翌月10日まで
雇用保険の被保険者となる外国人の離職雇用保険被保険者資格喪失届と併せて必要事項を届出原則として離職日の翌日から起算して10日以内
雇用保険の被保険者とならない外国人の雇入れ・離職外国人雇用状況届出書(様式第3号)雇入れ・離職日の属する月の翌月末日まで

この届出をせず、又は虚偽の届出をした場合には罰則の対象となり得ます。会社内で「採用担当が在留カードを確認する」「労務担当が届出をする」「期限管理を人事システムに登録する」と役割を分ける場合には、情報が途切れない仕組みを作ります。

13.外国人本人の「所属機関に関する届出」も案内する

外国人雇用状況の届出とは別に、一定の在留資格を有する中長期在留者本人には、勤務先との契約終了や新たな契約締結等があった場合、原則として14日以内に出入国在留管理庁へ「所属(契約)機関に関する届出」等を行う義務があります。

例えば「技術・人文知識・国際業務」「介護」「技能」「特定技能」等では、本人側の届出が問題になります。会社が本人に代わって当然に義務を負うものではありませんが、入退社時のチェックリストに「本人の入管届出が必要か確認・案内する」という項目を置くと、手続漏れを防ぎやすくなります。

一方、所属機関側にも入管への届出制度がありますが、労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況の届出義務がある雇用主については、一定の所属機関届出の対象から除外されています。会社の届出と本人の届出を混同せず、誰が何を出すのかを整理してください。

14.配属・異動・兼務のときに在留資格を再確認する

外国人社員について問題が起こりやすいのは、採用時よりも採用後の業務変更です。採用時には在留資格に適合する職務だったとしても、組織変更や人手不足によって担当業務が大きく変われば、在留資格との整合性が崩れることがあります。

場面見落としやすいリスク社内で行う確認
配置転換新しい職務が在留資格の活動範囲外になる異動辞令前に具体的職務を人事・現場・担当専門家で確認する
店舗・工場への応援一時的な研修か、恒常的な単純作業かが不明確になる期間・目的・日本人社員との研修の同一性等を記録する
兼務主業務より資格外の業務が実態上中心になる業務割合と実態を確認し、職務記述書を更新する
転職者の採用前職で同じ在留資格だったため自社でも当然可能と誤認する自社の職務内容で改めて活動該当性を確認する
副業・社外活動本人の在留資格で許容されない活動を行う必要に応じ資格外活動許可等の有無を確認する

就業規則上の配転命令が可能であることと、入管法上その業務に従事できることは別問題です。人事異動の承認フローに在留資格確認を組み込むことが重要です。

15.在留期限の管理は「本人任せ」にしない

在留期間更新の申請主体は原則として外国人本人ですが、企業側が在留期限を全く管理しない運用はリスクがあります。在留期限を過ぎて就労させれば、不法就労の問題につながり得るためです。

採用時に満了日を人事台帳へ登録し、一定期間前に本人へ更新予定を確認する、更新申請中である場合には申請状況を確認する、更新後の在留カード情報を再確認する、といったフローを設けます。

特に、多数の外国人を雇用する会社では、Excelや担当者の記憶だけに頼ると漏れが起きやすくなります。人事システムのアラート、担当部署への自動通知、月次確認等を組み合わせ、期限管理を組織化します。

16.不法就労助長罪:知らなかっただけでは免責されない場合がある

入管法73条の2は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた場合等を不法就労助長罪として処罰対象としています。現在の法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科です。

重要なのは、外国人が不法就労者であることを雇用主が知らなかった場合でも、在留資格の有無を確認していないなど過失があるときは処罰を免れないとされている点です。「本人から大丈夫と言われた」「人材紹介会社が紹介した」という事情だけで確認を省略しないでください。

2027年4月1日以降は、不法就労助長罪の法定刑が5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金へ引き上げられる予定です。採用時の確認手順、在留期限管理、業務変更時の再確認を2026年度中に整備しておく実務上の重要性は高いといえます。

17.人材紹介会社・送出機関・登録支援機関に任せきりにしない

外国人採用では、人材紹介会社、海外の送出機関、監理団体、登録支援機関、行政書士等、複数の外部関係者が関与することがあります。しかし、外部事業者が関与していることと、自社が雇用主として確認すべき事項は別です。

紹介会社から「この在留資格で問題ありません」と説明された場合でも、自社が予定する具体的職務を共有し、在留カード・許可内容を確認します。特定技能では、登録支援機関へ支援を委託しても、賃金、労働時間、安全衛生、ハラスメント防止、解雇等の使用者責任は会社に残ります。

また、国外からの採用では、本人が高額な保証金・違約金を負担していないか、紹介・取次ぎのスキームが適法かも重要です。外国人雇用管理指針は、違約金や保証金徴収等に関する不適切な取次機関・職業紹介事業者の利用を避けるよう求めています。

18.退職・解雇・雇止めでは労働法と入管手続を切り分ける

外国人社員の退職・解雇・雇止めでは、「在留資格があるから解雇できない」「外国人だから帰国してもらえばよい」といった扱いはできません。解雇・雇止めの有効性は、外国人にも日本人と同様に労働契約法や労働基準法等に基づいて判断されます。

会社都合の離職では、外国人雇用管理指針上、本人が再就職を希望するときの再就職援助に努めることも求められています。特定技能1号では、受入れ側の都合による雇用契約解除の場合の転職支援が義務的支援に含まれます。

退職時には、外国人雇用状況の離職届出、社会保険・雇用保険、貸与物・金品の返還、本人側の所属機関届出の案内等をまとめて確認します。在留カードや旅券の原本を会社が保管している場合には、その運用自体を見直してください。

18-1.裁判例:技能実習では在留資格手続の調査・説明義務が問題となる

大阪地裁令和5年9月28日判決(令和3年(ワ)第3191号)は、ベトナム人技能実習生について、技能実習1号から2号への在留資格変更が在留期間満了までにできず、就労できない期間が生じた事案です。裁判所は、3年間の技能実習を予定した雇用契約の目的・内容と技能実習制度の仕組みを踏まえ、実習実施者である会社には、在留資格変更の申請主体が本人であるとしても、日本に在留しながら技能実習を継続するために取り得る手段の有無を調査し、本人に説明すべき義務があると判断しました。

本件では、技能実習計画の認定審査が会社の労働基準法等の違反に対する是正勧告を契機に止まった後、短期滞在への在留資格変更申請等によって適法な在留を継続できる可能性が高かったにもかかわらず、その方法を説明しなかった点について、会社と監理団体の不法行為責任が認められています。また、会社が在留資格変更手続を監理団体へ委任していたことも、会社自身の説明義務を免れさせる事情とはされませんでした。

もっとも、この判決は、技能実習という制度上、実習実施者が技能実習計画を作成・認定申請し、技能実習生の保護について特別な責務を負う事案です。一般の外国人雇用について同一内容の調査・説明義務が当然に生じると一般化すべきではありません。ただし、会社側が在留資格手続や更新に深く関与する場合には、「申請は本人の責任」「外部専門家へ任せたから会社は関係ない」と整理せず、会社が把握している事情、契約内容、関与の程度に応じて必要な説明・連携を検討するという実務上の示唆があります。

19.外国人雇用で起こりやすい誤解

  • 「在留カードに就労可と書いてあれば、どんな仕事でも任せられる」→ 活動型の在留資格では具体的な業務との適合性確認が必要です。
  • 「前の会社で同じ在留資格だったので、自社でも同じ資格で働ける」→ 自社の職務内容で改めて確認します。
  • 「留学生は週28時間以内なら必ず働ける」→ 資格外活動許可の有無・内容、他社での就労等も確認します。
  • 「登録支援機関へ委託すれば、会社は外国人雇用を管理しなくてよい」→ 支援委託と使用者としての労務責任は別です。
  • 「在留カードのコピーを取れば確認義務は終わる」→ 真正性、就労制限、資格外活動許可、実際の職務との対応が重要です。
  • 「在留期限の更新は本人の責任なので会社は関係ない」→ 不法就労を防ぐため、会社側でも期限管理を行うべきです。
  • 「外国人雇用状況の届出を出せば、入管関係の届出も全て完了する」→ 本人の所属機関届出等とは別制度です。
  • 「在留資格が更新されなければ自動的に退職扱いにできる」→ 雇用契約終了の労働法上の問題を別途検討する必要があります。

20.採用から退職までの実務フロー

外国人雇用を個々の担当者の経験に頼らず運用するため、採用から退職までの確認項目を時系列で統一しておくと安全です。

① 採用予定の職務内容・勤務地・雇用形態を具体化する

② 在留資格、就労制限、在留期限、資格外活動許可を確認する

③ 在留資格と予定業務の適合性を確認する

④ 必要に応じて在留資格変更・認定等の手続を進める

⑤ 労働条件を本人が理解できる方法で明示し、雇用契約を締結する

⑥ 外国人雇用状況の届出を期限内に行う

⑦ 社会保険・雇用保険等の適用手続を行う

⑧ 在留期限を人事台帳へ登録し、更新確認のアラートを設定する

⑨ 配属・異動・兼務・副業等の変更時に在留資格を再確認する

⑩ 更新後の在留カード・就労制限等を再確認する

⑪ 退職・離職時の外国人雇用状況届出等を行う

⑫ 本人に所属機関に関する届出等が必要か確認・案内する

21.会社側で残しておきたい確認記録

外国人雇用では、後から「何を確認したか」を説明できる記録が重要です。ただし、個人情報を必要以上に収集するのではなく、確認目的に応じて管理します。

  • 採用時の職務記述・求人票
  • 本人から提示を受けた在留資格・就労制限・在留期限の確認記録
  • 資格外活動許可の確認記録(該当する場合)
  • 在留カード等読取アプリ・失効情報照会を利用した場合の確認記録
  • 雇用契約書・労働条件通知書
  • 本人に説明した言語・説明資料
  • 外国人雇用状況届出の控え・受付記録
  • 在留期間更新の確認記録
  • 異動・職務変更時の在留資格確認記録
  • 特定技能の場合の支援計画・支援実施記録・委託関係資料
  • 退職時の届出・案内記録

22.弊所の実務上の視点:外国人雇用は「採用時の確認」より採用後の変化管理が重要

外国人雇用では、採用時に在留カードを確認すること自体は比較的実施されやすい一方、その後の異動、兼務、業務内容の変化、在留期限更新、退職といった場面で確認が途切れることがあります。

特に、現場の人手不足を理由に予定外の業務を担当させる、本人の在留期限を人事部が把握していない、転職者について前職と同じ在留資格だから問題ないと判断する、といった運用は、採用時の適法性があっても後からリスクを生じさせます。

弊所では、外国人雇用のルールを整える場合、在留資格ごとの細かな知識を人事担当者全員に暗記させるよりも、「採用」「異動」「更新」「退職」というイベントごとに、誰が何を確認し、判断が難しい場合にどこへエスカレーションするかを決めることが重要だと考えています。

また、雇用契約、就業規則、人事異動のルールと入管手続を分断しないことも重要です。労務上は可能な人事措置でも在留資格上できない場合があり、逆に在留資格上の問題があっても労働契約を直ちに終了できるとは限りません。両方の法的枠組みを同時に確認する体制が必要です。

23.外国人雇用チェックリスト

  • 採用予定の具体的職務を整理した
  • 在留カード等の原本提示を受けた
  • 在留資格・就労制限・在留期限を確認した
  • 必要に応じ読取アプリ・失効情報照会を利用した
  • 資格外活動許可が必要な場合、その内容を確認した
  • 予定業務が在留資格の活動範囲に入るか確認した
  • 労働条件通知書・雇用契約書を本人が理解できる方法で説明した
  • 賃金・控除・住居費・渡航費等の条件を明確にした
  • 外国人雇用状況の届出担当者と期限を決めた
  • 社会保険・雇用保険の適用を確認した
  • 在留期限を人事台帳へ登録した
  • 更新前の確認時期を設定した
  • 異動・兼務時の在留資格再確認フローを作った
  • 特定技能の場合、支援計画・分野別要件を確認した
  • 技能実習を利用している場合、育成就労への移行準備を確認した
  • 退職時の外国人雇用状況届出を行う体制がある
  • 本人に必要な入管届出を案内する体制がある
  • 旅券・在留カードの原本を会社で保管していない

24.FAQ

Q1.在留カードのコピーは必ず保存しなければなりませんか?

外国人雇用状況の届出に在留カード等の写しを添付する必要はありません。企業が確認記録として写しを保存する場合は、目的・アクセス権限・保存方法を整理してください。原本を会社で保管する運用は避けます。

Q2.「永住者」であれば職種は自由ですか?

入管法上、身分・地位に基づく在留資格は就労活動の制限がありません。ただし、医師等の資格法、通常の労働法令、社内規程等は別途適用されます。

Q3.「技術・人文知識・国際業務」なら一般事務や現場作業を何でも任せられますか?

一律にはできません。実際の業務が在留資格で認められる専門的・技術的活動等に該当するかを確認する必要があります。

Q4.留学生は週28時間以内なら採用できますか?

時間だけでなく資格外活動許可の有無・内容を確認します。他社での就労状況や、就労が禁止される業務・場所にも注意が必要です。

Q5.外国人にも最低賃金は適用されますか?

原則として適用されます。国籍を理由に賃金等の労働条件を差別的に取り扱うことも労働基準法3条で禁止されています。

Q6.労働条件通知書は必ず外国語で作る必要がありますか?

労基法上の明示義務に加え、外国人雇用管理指針は母国語等や平易な日本語など、本人が理解できる方法で明示するよう努めることを求めています。外国語版の作成はその有効な方法の一つです。

Q7.外国人雇用状況の届出は全ての外国人が対象ですか?

原則として対象ですが、特別永住者や在留資格「外交」「公用」の者は対象外です。雇用保険の被保険者かどうかで届出方法・期限も異なります。

Q8.退職した外国人について会社が14日以内に入管へ届け出る必要がありますか?

会社の外国人雇用状況届出と、外国人本人の所属機関に関する届出は別制度です。一定の在留資格では本人に14日以内の届出義務があります。会社側の入管届出は対象・除外を個別に確認します。

Q9.在留期限の更新は本人に任せてよいですか?

申請主体が本人でも、会社が期限を把握せず就労を継続させることはリスクがあります。会社側でも満了日を管理し、更新状況を確認する運用が望まれます。

Q10.登録支援機関へ委託すれば特定技能外国人への対応は全て任せられますか?

支援計画の実施を委託することはできますが、会社が雇用主として負う賃金・労働時間・安全衛生・解雇等の責任まで移転するわけではありません。

Q11.技能実習制度は2027年4月にすぐ使えなくなりますか?

育成就労制度は2027年4月1日から開始しますが、施行前に進行している技能実習等について経過措置があります。受入れ時期・計画認定の状況ごとに確認が必要です。

Q12.不法就労者だと知らなければ会社は処罰されませんか?

知らなかった場合でも、在留カードを確認していないなど過失があるときは処罰を免れないとされています。採用時の確認記録を残すことが重要です。

Q13.2027年4月から不法就労助長罪はどう変わりますか?

現在の3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金から、5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金へ引き上げられる予定です。

Q14.外国人社員を他部署へ異動させるときも入管法の確認が必要ですか?

必要です。就業規則上の配転が可能でも、新しい職務が在留資格の活動範囲に含まれるかは別途確認する必要があります。

Q15.在留資格が更新できなかったら直ちに解雇できますか?

直ちにそうなるとは限りません。実際に就労可能かという入管法上の問題と、雇用契約を終了できるかという労働法上の問題を分けて検討する必要があります。

25.弁護士等への相談を早めた方がよい場面

次のような場合は、採用・異動・契約終了等を実行する前に、入管実務を扱う行政書士等の専門家と、必要に応じて労務・契約面を扱う弁護士へ相談することを検討してください。

  • 採用予定の業務が「技術・人文知識・国際業務」に該当するか判断が難しい
  • 留学生を新卒採用するが、入社時までに在留資格変更が間に合うか不安がある
  • 外国人社員の配置転換・職務変更を予定している
  • 特定技能外国人の雇用契約・支援体制を新たに整備する
  • 技能実習から育成就労への移行準備が必要である
  • 在留期限切れ、資格外活動超過、業務範囲外の就労が判明した
  • 外国人社員の解雇・雇止め・退職勧奨を検討している
  • 人材紹介会社・送出機関との契約条件に保証金・違約金等の懸念がある
  • 多数の外国人を雇用しており、在留期限・届出の管理体制を見直したい

26.まとめ

外国人雇用では、在留カードを確認するだけでは十分ではありません。企業は、在留資格・就労制限・資格外活動許可・在留期限を確認したうえで、実際に担当させる業務が在留資格の活動範囲に合っているかを確認する必要があります。

また、採用後も、労働条件の明示、外国人雇用状況の届出、社会保険、在留期限管理、異動時の再確認、退職時の届出等が続きます。外国人だから特別な労働ルールになるのではなく、日本の労働法を原則として適用しつつ、入管法上の活動制限と手続が追加されると整理すると分かりやすくなります。

2026年6月からは新様式の在留カードが交付され、2027年4月1日には育成就労制度の開始と不法就労助長罪の厳罰化が予定されています。今後も制度変更が続くため、採用担当者個人の知識に依存せず、「採用・異動・更新・退職」の各時点で確認する社内フローを整備することが、外国人雇用のリスク管理では重要です。

27.主要な裁判例・一次資料・公式情報

  • 横浜地方裁判所令和6年4月25日判決(令和2年(ワ)第144号、令和2年(ワ)第1086号)
  • 大阪地方裁判所令和5年9月28日判決(令和3年(ワ)第3191号)
  • 厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」
  • 厚生労働省「外国人の雇用」
  • 厚生労働省「外国人雇用はルールを守って適正に」(令和8年6月改訂版)
  • 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(令和8年6月14日改正)
  • 厚生労働省「外国人雇用状況の届出」
  • 出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」
  • 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」(令和8年4月15日更新)
  • 出入国在留管理庁「資格外活動の許可」
  • 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」
  • 出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」「育成就労制度Q&A」
  • e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
  • e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
  • e-Gov法令検索「労働基準法」