ベンチャー・スタートアップ法務

2026年8月31日

株主間契約の必須条項:Drag/Tag/ROFRの実務解説

創業者・投資家間の株式移動とExitを、実際に機能する条項へ落とし込む

スタートアップの株主間契約では、経営への関与、情報提供、株式譲渡、創業者の退任、M&Aなど、投資後に起こり得る重要局面のルールを定めます。特にDrag Along(同時売却請求権・強制売却に関する条項)、Tag Along(共同売却権)及びROFR(Right of First Refusal/先買権)は、Exitと株主構成のコントロールに直結するため、名称だけを盛り込むのではなく、発動条件・通知・価格・決済・他条項との優先関係まで設計することが重要です。

本記事では、株主間契約の一般論は最小限にとどめ、スタートアップの実務で問題になりやすいDrag・Tag・ROFRを中心に、創業者・会社・投資家それぞれの視点から条項設計を整理します。

結論

株主間契約で重要なのは「権利名」ではなく、誰が・いつ・どの条件で・どの順序で権利を行使できるかを明確にすることです。特にM&Aでは、ROFR、Tag、Drag、譲渡承認、優先株式の条件、みなし清算、投資家の事前承認事項が同時に動くため、契約書全体を一つのExitフローとして設計する必要があります。

1|株主間契約は「定款」と「投資契約」と役割が異なる

株主間契約は、投資後における会社運営、情報開示、株式譲渡、投資家のExit等について、発行会社・創業株主・投資家などの当事者間でルールを定める契約です。経済産業省のスタートアップ投資契約ガイドラインも、株主間契約の中心を「会社経営」「情報開示」「投資家のExit」等として整理しています。

一方、株式そのものの内容、種類株式、会社法上の譲渡制限、機関設計等は、定款や会社法上の手続が関係します。たとえば、会社法上、株主は原則として株式を譲渡できますが、譲渡制限株式については会社の承認手続が予定されています。株主間契約で「第三者への譲渡禁止」やROFRを定めても、それだけで会社法上の譲渡承認手続や株主名簿の処理まで当然に置き換わるわけではありません。

したがって、株主間契約に違反する譲渡があった場合の効果も、「契約違反だから第三者への譲渡が当然に無効」と単純化せず、定款上の譲渡制限、会社の承認、株主名簿、契約上の救済などを分けて検討する必要があります。

文書主な役割実務上の確認ポイント
定款株式の内容、譲渡制限、機関設計等の会社法上の基本ルール株主間契約と矛盾しないか。種類株式・譲渡承認機関は合っているか
投資契約・株式引受契約今回の投資実行条件、表明保証、払込、前提条件等クロージング前後の義務と株主間契約の開始時点を揃える
株主間契約投資後の経営関与、情報、株式移動、Exit等誰が当事者か、後続投資家をどう加入させるか、違反時の効果を明確にする
財産分配・Exit関連合意みなし清算や全株主参加が望ましいExit条件等小口株主・従業員株主を含め全株主の合意が必要かを検討する

2|最初に決めるべきは「誰を株主間契約の当事者にするか」

シリーズが進むと、創業者、VC、CVC、エンジェル、従業員株主、事業会社など株主の属性が増えます。しかし、すべての株主に同じ経営関与権を付与すると、承認取得や契約変更が重くなり、次回調達やM&Aの妨げになることがあります。

経済産業省のガイドラインも、経営関与を求めないエンジェルや従業員株主まで株主間契約に含めることが事務負担になる場合を指摘し、M&Aの同時売却請求権やみなし清算など、全株主で合意することが望ましい事項は別の契約で調整する方法を示しています。

実務上の確認

「株主間契約の当事者」と「Exit時に売却へ参加させる必要がある株主」は必ずしも同じではありません。契約当事者を広げすぎると変更が重くなり、狭すぎるとDragが全株式に届かないという問題が生じます。

3|ROFR(先買権)は「外部流出防止」だけでなく手続設計が重要

ROFRは、ある株主が第三者へ株式を売却しようとするとき、既存株主や会社等に、同一又は一定の条件で先に買い取る機会を与える仕組みです。創業者株式が意図しない第三者へ移ることを防ぎやすくする一方、条件が重すぎると売却可能性や流動性を過度に制約します。

設計項目確認すべき内容
対象譲渡全ての譲渡か、創業者のみか、関係会社・相続・組織再編等を除外するか
通知内容買主候補、株数、価格、支払条件、その他重要条件をどこまで通知させるか
行使期間短すぎて判断不能にならず、長すぎて第三者取引を失わない期間か
買受主体会社、既存株主、特定投資家のどの順序で買えるか
一部行使全株式の買受けが必要か、比例按分で一部行使を認めるか
第三者売却可能期間ROFR不行使後、何日以内なら同一条件以上で第三者へ売却できるか
条件変更第三者への価格引下げ・条件変更時に再度ROFRを回すか
定款との整合会社法上の譲渡承認とROFR手続をどの順序で行うか

ROFRは「登記をする権利」ではなく、基本的には契約上の権利として設計されます。そのため、違反譲渡が発生した場合に、違約金、損害賠償、譲渡人に対する是正義務など、どの救済を予定するかも検討しておくべきです。

4|Tag Along(共同売却権)は少数株主のExit機会を確保する

Tag Alongは、創業者や大株主が第三者へ株式を売却する場合に、一定の株主が同じ買主へ同等条件で自己株式も売却できる権利です。支配株主だけが有利な条件でExitし、残された少数株主が新しい支配株主との関係を強制されることを避ける機能があります。

実務では、単に「同条件で売却できる」と書くだけでは足りません。買主が全株式を買わない場合の按分、対象となる売却割合、Tag対象株主の範囲、対価が現金以外の場合の扱い、表明保証・補償責任の負担範囲などを決める必要があります。

論点設計例・考え方
発動対象創業者又は支配株主による一定割合以上の譲渡、支配権移転を伴う譲渡等
売却可能割合譲渡株主と同割合の比例参加/一定の場合は保有株式全部
売却条件1株当たり対価だけでなく、支払時期、エスクロー、アーンアウト等も実質的に同等とするか
責任分担少数株主に事業上の表明保証まで負わせない、補償責任を受領対価の範囲に限定する等
手続売却予定の事前通知、Tag行使期間、買主との契約締結期限を設定

5|Drag Alongは「M&Aを成立させるための最終手段」

Drag Alongは、一定の株主又は所定の多数株主が会社売却を決定した場合に、他の株主にも同じ買主への株式売却を求める仕組みです。買主が100%取得を条件とするM&Aでは、少数株主1名の不同意で取引が止まることを防ぐために重要です。

もっとも、Dragは少数株主に株式売却を強いる強い条項です。誰が単独で発動できるのか、創業者の同意が必要か、投資家の多数決か、最低売却価格や優先株式の経済条件とどう整合させるかを慎重に設計する必要があります。

必須設計項目確認内容
発動権者創業者単独、一定割合の普通株主、多数優先株主、取締役会承認との組合せ等
発動対象取引株式100%売却だけか、一定割合以上の株式譲渡・事業譲渡・合併等を含めるか
最低条件最低企業価値、最低1株価格、一定ラウンド以降の条件等を置くか
対価配分優先株式の残余財産分配・みなし清算条項とどの順序で計算するか
協力義務SPA締結、株券・必要書類提出、株主名簿書換等への協力をどこまで義務化するか
表明保証各株主は権原等の個別事項のみ負い、会社の事業表明保証は会社・創業者に限定するか
補償上限売却代金を超える責任を少数株主に負わせない設計か
費用FA・弁護士費用等の負担を売却代金控除にするか会社負担にするか
重要

Drag条項は、M&Aの時点で初めて読むのでは遅い条項です。次回ラウンドで投資家が増えるたびに、発動要件・多数決基準・みなし清算・優先株式条件との整合性を確認しておく必要があります。

6|ROFR・Tag・Dragは「どれが先に動くか」を決める

同じ株式譲渡にROFR、Tag、Dragが同時に適用されると、手続が循環して取引が進まないことがあります。たとえば、創業者が会社売却のため第三者へ譲渡しようとした際、ROFRが先に発動すると、買主による100%取得を前提とするDragと衝突する可能性があります。

そのため、契約上は典型的に、Dragが適法に発動された場合にはROFR・Tagを適用しない、通常の第三者譲渡ではROFRを先に処理し、その後Tagを行使させる、といった優先順位を明記します。

場面基本的な検討順序
通常の第三者譲渡譲渡禁止・承認事項 → ROFR → Tag → 会社法上の譲渡承認 → クロージング
会社全体のM&ADrag発動要件 → 投資家・創業者の承認 → みなし清算・対価配分 → 全株主の売却協力
創業者退任時の株式処理退任事由 → 買取・譲渡義務 → 価格算定 → ROFR等との優先順位 → 会社法上の手続
IPO準備株主間契約の終了・権利放棄時点 → 譲渡制限・種類株式の整理 → 上場審査に必要なガバナンスへ移行

6-1|裁判例:退任時買取条項と先買権が競合した事案

東京地裁令和4年2月16日判決(令和2年(ワ)第22569号・令和3年(ワ)第3944号)は、スタートアップの創業者5名が締結した創業者間契約について、退任した創業者の株式を会社が取得したのか、それとも退任前に開始された先買権の手続に沿って第三者らへ譲渡されたのかが争われた事案です。本件契約には、退任時の株式買取りに加え、先買権、共同売却請求権(Tag Alongに相当する条項)、共同売渡請求権(Drag Alongに相当する条項)が置かれていました。

ところが、退任時買取条項と先買権の手続が競合した場合の優先関係は契約に明記されていませんでした。裁判所は、契約締結前の議事録、タームシート、顧問弁護士とのメール、創業者間の協議経緯等を踏まえ、この契約では、退任した創業者が株式を保有し続けることで、その後の意思決定、資金調達、Exit等に支障が生じることを防ぐことが主な目的であったと捉えました。そのうえで、できる限り退任者からの株式買取りを可能にする方向で解釈するのが合理的であるとし、先買権に基づく譲渡について株主名簿の名義書換えまで完了する前に退任時買取手続が採られた本件では、会社による自己株式取得の効力を認めました。

この判決は、退任時買取条項が常にROFRより優先するという一般ルールを示したものではありません。むしろ実務上重要なのは、複数の株式移動条項の優先関係を契約で定めなければ、契約目的や締結経緯を踏まえた解釈が必要となり、Exitや退任の局面で紛争が生じ得るという点です。ROFR・Tag・Dragだけでなく、退任時買取条項、譲渡禁止、会社法上の譲渡承認等を含め、どの条項が先に適用され、どの時点で手続が完了するのかまで一つのフローとして明記しておくことが重要です。

7|経営に関する条項は「拒否権を増やすほど安全」とは限らない

株主間契約では、取締役指名権、オブザーバー権、事前承認事項、情報提供義務なども重要です。しかし、投資家の事前承認事項を広く設定しすぎると、事業スピードが落ち、後続投資家との調整も難しくなります。

2025年増補版の経済産業省ガイドラインは、スタートアップの成長フェーズに応じたガバナンス構築を重視し、契約上のコントロールに過度に依存するのではなく、取締役会や種類株式等も含めた体制設計を検討する方向を示しています。株式買取請求権についても、設定しない方向性が提示され、重大な契約違反を防ぐガバナンス等との組合せが重視されています。

条項実務上のポイント
取締役指名権持株比率や投資額が低下した後も永続する設計にしない。終了条件を定める
事前承認事項新株発行、M&A、重要な借入等、本当に企業価値へ重大影響がある事項へ絞る
情報提供月次・四半期・年度で資料範囲と提出期限を分ける。競合投資家への機密情報にも配慮
議決権行使特定事項について賛否を拘束する場合、会社法上の機関決定と契約義務を区別する
株式買取請求契約違反時に当然の救済とせず、必要性・価格算定・創業者個人責任の範囲を慎重に検討

7-1|裁判例:株主間合意は、効力の強さまで契約ごとに判断される

東京高裁令和2年1月22日判決(令和元年(ネ)第2796号)は、自然人株主間で締結された取締役選任に関する合意に基づき、特定の候補者を取締役に選任する議案へ賛成するよう、他の株主に議決権行使を求めた事案です。

裁判所は、株主の議決権行使や会社運営に関する株主間契約を一律に無効とすべきではないとした上で、契約当事者の属性、契約内容、締結の動機・目的、保有する株式・議決権の割合、締結時期などを検討し、当事者がどの程度の法的効力を生じさせる意思を有していたかを個別に判断すべきであるとしました。契約によっては、損害賠償にとどまらず、契約に沿った議決権行使の履行強制や、契約違反の議決権行使により成立した株主総会決議の瑕疵が問題となり得ることも示しています。

もっとも本件では、合意が昭和47年に自然人間で締結されたもので、特定の自然人を将来にわたり取締役候補者とする内容であったこと、相続時の取扱いが不明確であったこと、その後長期間にわたり合意どおりの運用がされていなかったこと、文書全体も会社運営に特化したものではなかったことなどから、将来の株主総会について議決権行使を強制できるほどの法的効力を付与する意思は認められないとして請求を退けました。

スタートアップの株主間契約でも、「特定の議案に賛成する」「一定の取締役候補者を選任する」とだけ書けば、当然に裁判でその議決権行使を強制できるわけではありません。議決権行使に関する条項を設ける場合は、対象事項、対象株主、効力を及ぼす期間、株式譲渡・相続・当事者変更時の取扱い、違反時の効果まで明確にし、どの程度の法的拘束を意図するのかを契約全体から読み取れるように設計することが重要です。

8|創業者の退任・デッドロックは平時に決めておく

株主間契約で実際に紛争化しやすいのは、M&Aだけではありません。共同創業者の退任、長期離脱、重大な契約違反、競業、意思決定の膠着などが起きると、株式を保有したまま経営に関与しない株主が残ることがあります。

創業者株式の処理を設ける場合は、Good Leaver/Bad Leaverの区分、買取主体、価格、支払方法、未確定株式やストックオプションとの関係を具体化します。特に会社自身が株式を取得する設計は、会社法上の自己株式取得手続や財源規制等を別途確認する必要があるため、「会社が必ず買い取る」とだけ書かないことが重要です。

デッドロック条項も、創業者間で50:50の議決権となる会社では重要です。協議・第三者調整・取締役会再審議・売買メカニズム等のどこまでを採用するかは、資金力の差や一方的な退出強制にならないかも含めて検討します。

9|M&Aで条項が機能するかは「売却フロー」でテストする

条項レビューでは、各条項を独立して読むだけでなく、具体的なM&Aを想定して一連の手続を流すことが有効です。

  1. 買主から100%株式取得の意向表明を受ける
  2. 取締役会・株主・投資家のどの承認が必要か確認する
  3. Dragの発動権者と必要持株比率を確認する
  4. ROFR・Tagが除外されるか、又は先行手続が必要か確認する
  5. 優先株式の転換・みなし清算・対価配分を計算する
  6. 全株主がSPAを締結するための通知・署名・書類提出手続を確認する
  7. 表明保証・補償・エスクロー等を株主間でどう分担するか確認する
  8. クロージング後に株主間契約を終了させる

このシミュレーションで「一人の株主が応答しないと進まない」「通知期間だけで数週間かかる」「ROFRとDragが衝突する」といった問題が見つかれば、平時に修正しておく価値があります。

10|IPO時には株主間契約の終了条件を確認する

株主間契約は、上場前に一定の投資家権利や株式譲渡制限を整理する必要があるため、IPOの申請・承認・上場等のどの時点で全部又は一部を終了させるかを定めるのが一般的です。終了のトリガーが曖昧だと、上場準備中に投資家の拒否権が残り、機関決定との調整が必要になることがあります。

ただし、秘密保持、既発生の損害賠償、準拠法・紛争解決等は契約終了後も存続させることがあります。IPOだけでなく、M&A、全投資家の合意、一定期間経過など複数の終了事由を整理しておきます。

11|弊所の実務上の視点:株主間契約は「平時の権利表」ではなく「異常時の手順書」にする

株主間契約は、投資家の権利を一覧化するだけでは十分ではありません。実際に価値が出るのは、創業者が退任した、投資家が増えた、買収提案が来た、株主が連絡不能になった、次回調達で既存条項の変更が必要になった、といった通常運営から外れた場面です。

弊所で特に確認する5つの連動

①定款・種類株式、②投資契約、③株主間契約、④資本政策・キャップテーブル、⑤将来のM&A/IPOフローを横断して確認します。条項単体では問題がなくても、この5つが連動しないと、Exit時に想定した権利を行使できないことがあります。

特にシリーズA以降は、前ラウンドの株主間契約に新投資家を単純追加するだけでなく、多数投資家の定義、承認事項、Dragの発動基準、契約変更要件、情報提供先などをラウンドごとに再設計することが重要です。

12|株主間契約チェックリスト

  • 契約当事者の範囲が適切か。小口株主まで過剰に参加させていないか
  • 後続投資家が加入する手続と、契約変更に必要な同意割合が明確か
  • 定款上の譲渡制限とROFRの順序が明確か
  • ROFR通知に必要な価格・買主・主要条件が具体化されているか
  • Tagの対象譲渡、参加割合、同等条件の意味が明確か
  • Dragの発動権者・必要持株比率・対象取引が明確か
  • Drag時の最低価格又は経済条件を置く必要がないか検討したか
  • 優先株式・みなし清算とDragの対価配分が整合しているか
  • ROFR・Tag・Dragに加え、退任時買取条項等との優先順位と各手続の完了時点が明記されているか
  • 少数株主に過大な表明保証・補償責任を負わせない設計か
  • 創業者退任時の株式処理、Good/Bad Leaver、価格算定が明確か
  • 会社による自己株式取得を想定する場合、会社法上の手続を確認しているか
  • 取締役指名権・議決権行使・事前承認事項について、対象・期間・終了条件・違反時の効果が明確か
  • 情報提供義務が成長後も運用可能な頻度・範囲か
  • IPO・M&A・全員合意等の終了事由と存続条項が明確か
  • 株主名簿・キャップテーブルと契約当事者が一致しているか

13|FAQ

Q. DragがなければM&Aはできませんか?

A. できないわけではありません。全株主が個別に売却へ同意すれば実行できます。ただし、買主が100%取得を求める場合、少数株主の不同意や連絡不能が取引リスクになるため、Dragを設ける意味があります。

Q. Dragがあれば少数株主の同意は一切不要ですか?

A. 契約で有効に発動できる条件を満たし、対象株主がその契約に拘束されていることが前提です。また、会社法上必要な機関決定や株式譲渡承認等が別に必要となる場合があります。

Q. ROFRと定款の譲渡制限は同じですか?

A. 異なります。ROFRは通常、契約当事者間で先に買う機会を与える仕組みです。定款上の譲渡制限は会社法上の承認手続に関する制度です。両方を設ける場合は順序を決めます。

Q. Tagはどの株主に付けるべきですか?

A. 少数投資家保護のため投資家に付与することが多いですが、全投資家に一律付与すると手続が重くなることがあります。支配権移転の場面に限定するなど、対象を設計します。

Q. ROFR・Tag・Dragを全部入れれば安全ですか?

A. 条項が増えるほど安全とは限りません。優先順位や除外規定がないと同一取引で複数の権利が衝突し、かえってM&Aが進まないことがあります。東京地裁令和4年2月16日判決でも、退任時買取条項と先買権の優先関係が契約上明記されておらず、契約目的や締結経緯を踏まえた解釈が必要となりました。

Q. 創業者が辞めたら会社が株式を買い取る条項にできますか?

A. 契約上の処理だけでなく、会社自身が自己株式を取得する場合には会社法上の手続や財源規制等の検討が必要です。買受主体を既存株主や指定第三者にする方法も含めて設計します。

Q. 株主間契約はいつ見直すべきですか?

A. 少なくとも新しい資金調達ラウンド、大株主の異動、創業者の役割変更、M&A検討開始、IPO準備開始のタイミングでは見直すべきです。

Q. IPO時に株主間契約は自動的に消えますか?

A. 自動的に消えるわけではありません。契約に定めた終了事由に従います。上場準備では、どの権利をいつ終了させるかを早めに確認します。

Q. 株主間契約で議決権行使を決めておけば、裁判でそのとおりに投票させられますか?

A. 当然に履行を強制できるわけではありません。東京高裁令和2年1月22日判決は、議決権行使に関する株主間契約を一律に無効とはせず、契約当事者の属性、契約内容、締結目的、議決権割合、締結時期等から、当事者がどの程度の法的効力を意図していたかを個別に判断すべきとしました。議決権行使を拘束する条項では、対象、期間、当事者変更時の取扱い、違反時の効果まで具体化することが重要です。

14|関連して確認したい記事

15|主な一次資料

※法令・ガイドラインは改正される可能性があるため、公開時にも最新版を確認してください。

16|まとめ

Drag・Tag・ROFRは、スタートアップの株主間契約を代表する条項ですが、英語名を並べただけでは機能しません。契約当事者、発動条件、株式数、価格、通知、他条項との優先順位、会社法上の手続、優先株式との対価配分、IPO・M&A時の終了までを一つのフローとして設計する必要があります。

資金調達のたびに株主が増えるスタートアップでは、初回契約をそのまま継ぎ足すのではなく、将来の次回調達とExitを想定して、株主間契約を定期的に更新することが重要です。

スタートアップの株主間契約・投資契約の設計、資金調達前のレビュー、既存契約の見直しについては、柳澤法律事務所までご相談ください。