「NFTだから規制対象外」「買えば画像の権利も取得できる」という思い込みを避けるための実務整理
NFT(Non-Fungible Token)は、アート、ゲームアイテム、会員証、チケット、デジタルコレクションなど幅広い用途で使われています。もっとも、NFTという技術上の呼称だけで法律上の権利や規制が決まるわけではありません。事業者は、①ブロックチェーン上のトークン、②紐づく画像・音楽・ゲームデータ等のコンテンツ、③著作権・利用許諾・サービス利用権、④資金決済法・金融商品取引法等の規制を分けて確認する必要があります。
2025年2月、経済産業省は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」にNFTをめぐる法律関係を新設し、NFT自体に所有権が認められるわけではないこと、NFT取得によって著作権が当然に移転するわけではないこと、二次流通時の利用権承継や、オフチェーンのコンテンツへアクセスできなくなった場合の契約責任が問題になることを整理しました。本稿では、この整理と金融庁の暗号資産該当性に関する考え方を踏まえ、NFTの発行・販売・二次流通を設計する企業が確認すべきポイントを解説します。
先に結論
- NFTを取得しても、NFTやデジタルコンテンツについて民法上の「所有権」が当然に発生するわけではありません。
- NFT購入者が画像・音楽等の著作権を取得するのは、著作権譲渡の合意がある場合です。通常は利用規約等に基づく限定的な利用許諾にとどまります。
- NFTの二次売買ができても、コンテンツの利用権まで当然に次の保有者へ移るとは限りません。二次取得者を含むライセンス設計が必要です。
- 「NFT」という名称だけで資金決済法の暗号資産から外れるわけではありません。決済手段性、価格・数量、利用実態等から個別に判断されます。
- NFTが利益分配や事業収益への権利を表章する場合は、金融商品取引法上の有価証券・電子記録移転権利等の検討が必要です。
- 二次流通でコンテンツ利用権を次の保有者にも認める場合は、二次取得者への新たな利用許諾又は利用権の譲渡を契約上設計し、取得時に規約を契約内容へ組み込む導線が必要です。
- 独自マーケットプレイスでは、NFTの掲載・売買だけでなく、暗号資産による決済、売買・交換の媒介、暗号資産のカストディ等を機能別に分解して登録要否を確認します。
1 NFTは「トークン・コンテンツ・権利・規制」を分けて見る
NFTビジネスでは、ブロックチェーン上の記録と、そのNFTが指し示すコンテンツや契約上の権利を同じものとして扱うと、利用者への説明や契約設計を誤りやすくなります。最低限、次の4層を分けます。
| 確認対象 | 何を確認するか | 典型的なリスク |
|---|---|---|
| トークン | チェーン上のID、移転可能性、数量、分割可能性、決済利用の有無 | 暗号資産等の金融規制該当性を「NFT」という名称だけで判断する |
| コンテンツ | 画像・動画・音楽・3Dデータ、メタデータ、保存先 | 権利処理不足、リンク切れ、ストレージ終了、改ざん |
| 契約上の権利 | 閲覧・商用利用・二次創作・会員資格・ゲーム内利用等 | NFT売買と利用許諾の範囲・承継条件が一致しない |
| 規制・表示 | 資金決済法、金商法、著作権法、特商法、景表法等 | 「限定」「唯一」「公式」「値上がり」等の表示と実態がずれる |
2 NFTを買っても「NFTの所有権」を取得するわけではない
経済産業省の2025年版準則は、NFTは無体物であり所有権の対象とはならないため、NFT保有者がNFTを取得しても、NFT自体について民法上の所有権が認められるわけではないと整理しています。NFT保有者が有する権利は、NFT発行者との契約、利用規約、NFTが表章するサービス上の権利などによって定まります。
したがって、利用者向けの説明で「NFTの所有権を販売します」「デジタル作品を所有できます」とだけ記載するのは避け、何を取得できるのかを具体化することが重要です。例えば、「NFTを保有している間、指定画像をプロフィール画像として非商用利用できる」「保有者限定イベントに参加できる」「ゲーム内で対象アイテムを利用できる」といった権利内容を規約で定めます。
3 NFT購入と著作権取得は別問題
NFTに画像・音楽・動画等の著作物が紐づいていても、NFTの購入だけで著作権が移転するわけではありません。文化庁も、所有権と著作権は別個の権利であり、著作物の利用には原則として権利者の許諾が必要であることを示しています。
著作権法63条では、著作権者は他人に著作物の利用を許諾でき、利用者は許諾された方法・条件の範囲内でのみ利用できます。また、著作権そのものを譲渡する場合は、契約上、何を譲渡するのかを明確にする必要があります。特に著作権法27条・28条の翻案等に関する権利まで譲渡する場合は、著作権法61条2項との関係から明示しておくことが重要です。著作者人格権は譲渡できません。
| 設計 | 購入者ができること | 契約上の注意 |
|---|---|---|
| 著作権は発行者側に留保 | 規約で許された閲覧・表示・非商用利用等 | 最も一般的。商用利用、改変、二次創作、グッズ化等の可否を分ける |
| 限定ライセンスを付与 | 一定の商用利用、SNS掲載等 | 売上上限、地域、媒体、期間、再許諾の可否を明確化する |
| 著作権を譲渡 | 著作権者として利用・許諾できる | 譲渡範囲、27条・28条、対価、著作者人格権の取扱いを別途整理する |
4 発行前に「誰がNFT化する権限を持つか」を確認する
第三者のイラスト、写真、音楽、キャラクター等をNFT化して販売する場合、発行者自身が著作権者であるとは限りません。制作委託をしただけで著作権が自動的に発注者へ移転するわけでもありません。クリエイターとの契約で、NFT発行、マーケットプレイス上の表示、メタデータへの組込み、プロモーション利用、二次流通を含めて必要な利用権限が確保されているかを確認します。
経済産業省の準則も、NFT発行者が著作権者又は適切なライセンスを受けた者であることを前提に、NFT保有者の利用権を整理しています。無断でコンテンツを複製・アップロードしてNFT販売ページ等で利用すれば、NFTという技術とは別に、複製権・公衆送信権等の侵害が問題になります。逆に、単にブロックチェーン上にトークンを発行したという事実だけで、あらゆる場合に著作権侵害になると一律に判断することも適切ではなく、実際にどの著作物をどのように複製・送信・表示したかを確認します。
5 二次流通では「NFT」と「利用権」が一緒に移る設計かを確認する
NFTはマーケットプレイスで二次流通できても、コンテンツの利用権が当然に次の購入者へ承継されるとは限りません。著作権法63条3項は、利用権は著作権者の承諾を得ない限り譲渡できないと定めています。
そのため、発行時の規約で、①NFT保有者にどの利用権を与えるか、②NFTが譲渡された場合に前保有者の利用権が終了するか、③新保有者へ同じ利用権を付与するか、④新保有者を利用規約にどう拘束するかを設計します。単にスマートコントラクト上でNFTが移転しただけでは、オフチェーンの利用規約が当然に譲受人へ適用されるとは限りません。
5-1 二次取得者へ利用権を通す方法は大きく2つある
二次流通を許すNFTでは、「利用権そのものを前保有者から譲渡させる」のか、「NFTを取得した新保有者に発行者が新たな利用許諾を与える」のかを区別して設計すると整理しやすくなります。経済産業省の2025年版準則も、NFT発行者が利用権の転々流通を認める場合として、利用権の譲渡を認める構成と、NFT発行者が譲受人に新たに利用権を設定する構成の双方を示しています。
| 設計 | 法的な考え方 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 新保有者へ新たに許諾 | NFTの現在保有者であることを条件に、発行者から新保有者へ直接ライセンスを付与する。 | NFT取得時に規約を表示・同意させ、譲渡時に前保有者のライセンスが終了することまで定める。 |
| 利用権の譲渡を認める | 著作権法63条3項を踏まえ、著作権者側が利用権の譲渡をあらかじめ承諾する構成にする。 | 譲渡対象となる利用権の範囲、前保有者に残る権利、新保有者が負う条件を明確にする。 |
| 第一次取得者だけに許諾 | 二次譲渡はNFT自体の移転にとどまり、コンテンツ利用権は新保有者へ与えない。 | 二次市場で「買えば画像を使える」と誤解されない表示が必要。 |
また、二次取得者を利用規約に拘束したい場合は、NFT発行者の規約がどこに掲載されているかだけでなく、取得時にその規約を契約内容とする旨が表示されているか、同意導線があるかを確認します。経済産業省の準則は、譲受人が規約へ合意した場合のほか、取得時に規約を契約内容とする旨があらかじめ表示されていると評価できる場合には、定型約款に関する民法548条の2第1項により契約内容となり得るとの整理を示しています。
| 論点 | 規約で決める事項 |
|---|---|
| 前保有者の権利 | NFT譲渡時にライセンスを終了させるか。保存済み画像や作成済み商品をどう扱うか。 |
| 新保有者の権利 | 保有確認を条件に自動的に許諾するのか、別途規約同意を求めるのか。 |
| 商用利用 | 売上上限、ブランド利用、商品化、改変、AI学習等の可否。 |
| ロイヤルティ | 二次販売時の支払が技術的・契約的に保証されるか。マーケットプレイス仕様変更時の扱い。 |
| 違反時 | ライセンス停止、表示削除、差止め、アカウント措置等。NFT自体を技術的に消せない場合の対応。 |
6 画像がオフチェーンなら「NFTは残るが作品が消える」ことがある
NFTのトークンIDやメタデータがブロックチェーンに記録されていても、画像・動画等の実データは外部サーバーや分散型ストレージに置かれていることがあります。サービス終了、URL変更、ストレージ障害等によって、NFTはウォレットに残っているのにコンテンツへアクセスできない状態が生じ得ます。
経済産業省の準則は、NFT保有者が有償でNFTを取得し、コンテンツを継続利用できるとの期待が契約上保護される場合、アクセス不能がNFT発行者の債務不履行となり得ることを整理しています。実務では、保存方式、保管期間、サービス終了時の移行、IPFS等を使う場合のピン留め主体、メタデータ変更権限、バックアップ、免責条項を整理します。消費者向け取引では、事業者の損害賠償責任を全面的に免除する条項等は消費者契約法上無効となり得るため、免責を置けば足りるわけではありません。
7 「NFTだから暗号資産ではない」とは限らない
資金決済法上の暗号資産該当性は、「NFT」という名称やトークン規格だけで決まりません。金融庁は、決済手段としての使用禁止が明示され、かつ、最小取引単位当たりの価格が1,000円以上又は発行数量が100万個以下であるものは、社会通念上、通常の決済手段として用いられる蓋然性が小さく、基本的に1号暗号資産の「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」という要件を満たさない例として示しています。
ただし、これらは絶対的なセーフハーバーではありません。実際に不特定の者への支払手段として利用されるなど、利用実態によって暗号資産に該当する可能性があります。他方、例示条件を満たさないだけで直ちに暗号資産になるわけでもなく、機能・数量・価格・分割可能性・流通実態等を個別に判断します。
無登録販売の確認ポイント
- 発行するトークンが資金決済法上の暗号資産に該当しないか。
- 事業者自身による販売、他者の売買の媒介、交換、カストディ等が暗号資産交換業に該当しないか。
- 2026年6月開始の電子決済手段・暗号資産サービス仲介業との切り分けが必要なスキームではないか。
- 収益分配・事業利益への参加等を付与し、金商法上の有価証券・電子記録移転権利等に該当しないか。
なお、2026年7月成立の金融商品取引法等改正では、暗号資産に関する主要な取引規制を金商法へ移す制度整備が進められていますが、金融庁は、現行の資金決済法上の暗号資産に該当しないNFTについては、この暗号資産規制見直しの対象外とする整理を示しています。もっとも、NFTが別途有価証券等に該当する場合は当然に別の検討が必要です。
8 投資・収益分配型NFTは金商法を先に確認する
NFTに「作品を楽しむ」「ゲーム内で使う」といった機能だけでなく、事業収益の分配、運用益の配当、共有財産からの分配等が付いている場合は、一般的なコレクティブルNFTとして整理するのは危険です。出資者が金銭等を拠出し、その資金を用いた事業から収益分配を受ける構造であれば、集団投資スキーム持分に該当する可能性があります。ブロックチェーン等で移転できる権利は電子記録移転権利として金商法上の規制対象となることがあります。
NFT販売ページで「将来値上がりする」「運営収益を還元する」「保有するだけで利回りが得られる」といった設計・訴求を行う場合には、名称よりも権利内容と資金の流れを確認します。トークン設計段階で法的分類を確定しないままマーケティングを先行させないことが重要です。
9 販売ページと利用規約で「希少性・公式性・権利範囲」を一致させる
NFTの販売では、「限定100点」「唯一の公式NFT」「購入者だけが商用利用可能」「二次流通ロイヤルティが永続する」など、購入判断に強く影響する表示が行われます。これらの表示と、スマートコントラクト・発行数量・権利処理・マーケットプレイスの仕様が一致しているかを確認します。
事業者が一般消費者へNFTをインターネット販売する場合、取引形態によっては特定商取引法上の通信販売として事業者情報等の表示義務が問題となります。また、商品・サービスの内容を実際より著しく優良に見せる表示や、価格・取引条件を実際より著しく有利に見せる表示は景品表示法上問題となり得ます。「ブロックチェーン上だから二重発行できない」「スマートコントラクトが作者ロイヤルティを永続保証する」といった説明は、実際の仕様と運用を確認してから表示します。
9-1 独自マーケットプレイスは「どの機能を自社が担うか」を分解する
NFTの発行者が自社マーケットプレイスも運営する場合、単に出品画面を提供するだけなのか、売買契約の成立へ関与するのか、暗号資産決済を扱うのか、利用者の暗号資産を管理するのかによって確認すべき法規制が変わります。「NFTのマーケットプレイスだから金融規制はない」と一括りにせず、機能単位で整理します。
| 機能 | 確認する事項 | 主な実務対応 |
|---|---|---|
| NFTの掲載・検索 | 誰が販売主体か。プラットフォームは契約当事者か、場の提供者か。 | 利用規約、出品者審査、権利侵害申告、表示責任を整理する。 |
| 売買の成立・二次流通 | 申込み・承諾の主体、利用規約の組入れ、二次取得者へのライセンス付与方法。 | 購入画面で権利内容と規約への同意を明確にし、売買とライセンスを連動させる。 |
| 暗号資産による決済 | NFT代金として暗号資産を受け取るだけか、利用者の暗号資産の売買・交換又はその媒介まで行うか。 | 暗号資産交換業等への該当性を取引フローで確認する。 |
| 秘密鍵・資産管理 | 利用者の暗号資産を他人のために管理する構成になっていないか。 | カストディの有無、送付権限、MPC・マルチシグの実権限を確認する。 |
9-2 「購入後の返品」と「アクセス不能時の責任」は分けて規約化する
一般消費者向けのオンライン販売が特定商取引法上の通信販売に該当する場合、通信販売には訪問販売等と同じ一般的なクーリング・オフ制度はありませんが、申込みの撤回・解除に関する条件や返品特約等は、取引類型に応じて広告や最終確認画面で分かりやすく表示する必要があります。単に「NFTは返品不可」とだけ記載し、購入者が取得する権利やサービス停止時の扱いを曖昧にするのは適切ではありません。
また、「購入者都合によるキャンセルを認めるか」という問題と、「契約上提供すると説明した画像・会員特典・ゲーム機能等にアクセスできなくなった場合に事業者がどの責任を負うか」という問題は別です。特にオフチェーンのコンテンツを利用価値の中心とするNFTでは、サービス停止、ストレージ障害、リンク切れ、チェーン移行時の対応を、返品・解除条項とは別に定めます。
10 NFT発行前の実務フロー
| Step | 実施事項 | 確認内容 |
|---|---|---|
| 1 | NFTが表章するものを定義 | コンテンツ、会員権、ゲーム利用権、チケット、収益分配等を明確にする。 |
| 2 | 権利者・権利処理を確認 | 著作者、委託先、ライセンサー、商標権者等との契約を確認する。 |
| 3 | 金融規制を分類 | 暗号資産、電子決済手段、有価証券・電子記録移転権利等への該当性を確認する。 |
| 4 | 一次販売の規約・表示を作成 | 取得できる権利、禁止事項、保管方法、価格、返品・キャンセル等を整理する。 |
| 5 | 二次流通を設計 | 利用権承継、前保有者の権利終了、ロイヤルティ、マーケットプレイス変更時の扱いを決める。 |
| 6 | 技術仕様と法務を突合 | ミント権限、metadata更新権、burn/freeze、保管先、スマートコントラクト管理者を確認する。 |
| 7 | 運用・終了時を決める | サービス停止、コンテンツ移行、問い合わせ、権利侵害申告、規約変更の手順を整備する。 |
11 NFT事業者向けチェックリスト
- NFTが何を表章するのかを一文で説明できる
- NFT自体に民法上の所有権が発生すると誤解させる表示をしていない
- 画像・音楽等の著作権者とNFT発行・販売に必要な権限を確認した
- 著作権を譲渡するのか、利用許諾にとどめるのかを明確にした
- 商用利用、改変、二次創作、AI利用、グッズ化等の可否を決めた
- NFT譲渡時に前保有者の利用権がどうなるかを決めた
- 二次取得者へ利用規約・ライセンス条件を適用する仕組みがある
- メタデータ・コンテンツの保管場所、更新権限、サービス終了時の扱いを決めた
- 二次販売ロイヤルティが技術的・契約的にどこまで実現可能か確認した
- 暗号資産該当性を名称ではなく機能・価格・数量・利用実態から確認した
- 収益分配等がある場合に金商法上の有価証券該当性を確認した
- 特商法・景表法を踏まえ販売ページの希少性・価格・権利表示を確認した
- 模倣NFT・なりすまし・権利侵害申告への対応手順を決めた
- 海外販売を行う場合、対象国の金融・消費者・知財規制を別途確認した
- 二次取得者への利用権を「新たな許諾」又は「譲渡承諾」のどちらで処理するか決めた
- 独自マーケットプレイスで暗号資産の売買・交換の媒介やカストディを行っていないか機能別に確認した
- 通信販売に該当する場合、返品・解除条件を販売ページと最終確認画面で分かりやすく表示した
12 よくある質問
Q1 NFTを買えば、画像の著作権も取得できますか?
原則として取得しません。NFT取引と著作権譲渡は別です。著作権を取得するには、著作権譲渡の合意が必要です。多くのNFTでは、規約に定めた範囲での利用許諾にとどまります。
Q2 NFTの「所有者」という表現は使えませんか?
ウォレット上のNFT保有者という意味で一般に用いられますが、民法上の所有権と同義と誤解させない説明が必要です。取得できる契約上の権利を具体的に表示する方が安全です。
Q3 NFTを転売したら、画像の商用利用権も新しい購入者へ移りますか?
当然には移りません。著作権法63条3項との関係も踏まえ、発行時から二次取得者へのライセンス付与・承継を規約で設計します。
Q4 NFTはすべて暗号資産ではありませんか?
いいえ。一般的なNFTは暗号資産に該当しないことが多い一方、名称だけでは決まりません。決済手段性、価格・数量、分割可能性、流通・利用実態等から個別に判断します。
Q5 1個1,000円以上なら必ず暗号資産ではありませんか?
必ずではありません。金融庁が示す1,000円や100万個という基準は、通常の決済手段として用いられる蓋然性が小さい場合の例示です。実際に決済手段として使われるなどの実態があれば別の評価になり得ます。
Q6 NFTに事業収益の分配を付けても問題ありませんか?
金融商品取引法上の集団投資スキーム持分や電子記録移転権利等に該当する可能性があります。通常のコレクティブルNFTと同じ前提で発行せず、発行前に確認が必要です。
Q7 画像をIPFSに置けばサービス終了リスクはなくなりますか?
必ずしもそうではありません。コンテンツが継続的に取得できるかは、ピン留め、ゲートウェイ、メタデータ、運営主体等にも左右されます。保存方式と契約上の責任を併せて設計します。
Q8 二次販売ロイヤルティはスマートコントラクトで必ず徴収できますか?
マーケットプレイスの仕様や取引方法によっては、想定どおり徴収できない場合があります。「永続的に必ず支払われる」と表示する前に、技術仕様と契約上の仕組みを確認します。
Q9 他人の作品を勝手にNFT化すると、NFT発行だけで著作権侵害ですか?
どのデータを複製・アップロード・公衆送信・表示したかなど具体的行為によります。無断で作品データを複製・掲載して販売する場合は著作権侵害が問題になります。
Q10 NFT発行前に弁護士へ相談する場合、何を準備すればよいですか?
トークン仕様、販売フロー、スマートコントラクト、発行数量・価格、コンテンツ権利関係、利用規約案、二次流通設計、収益分配の有無、マーケティング資料を用意すると、規制・知財・契約を一体で確認しやすくなります。
Q11 二次取得者に利用規約を自動的に適用できますか?
NFTが移転しただけで、発行者のオフチェーン利用規約が当然に新保有者へ適用されるとは限りません。取得画面やマーケットプレイス上で規約を示し、規約を契約内容とすることへの同意又は適切な組入れを設計します。
Q12 NFTをネット販売した場合、購入者は必ずクーリング・オフできますか?
通信販売には、訪問販売等と同じ一般的なクーリング・オフ制度はありません。ただし、取引の内容や返品特約、契約不適合・サービス提供義務等は別途検討が必要です。販売ページと最終確認画面で、キャンセル・解除条件とアクセス不能時の対応を明確にします。
13 弁護士への相談を検討した方がよい場面
- 第三者IP・キャラクター・アーティスト作品をNFT化する
- NFT保有者に商用利用・二次創作・グッズ化を認めたい
- 二次流通時にも利用権を継続させたい
- 多数発行、分割可能、低単価など暗号資産該当性が気になる設計である
- NFT販売に利益分配、収益還元、共同事業参加等の要素がある
- 独自マーケットプレイスでNFTの販売・媒介・カストディを行う
- 海外ユーザー向けに販売する
- 模倣NFT、無断ミント、なりすまし、規約違反の二次利用が発生した
- サービス終了・チェーン移行・ストレージ移行を予定している
14 主要な一次資料
- 経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(令和7年2月版)III-14-2 NFT(Non-Fungible Token)をめぐる法律関係
- 文化庁「著作権契約マニュアル」
- e-Gov法令検索「著作権法」
- e-Gov法令検索「資金決済に関する法律」
- 金融庁「暗号資産に関連する事業を行うみなさまへ」
- 金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:16 暗号資産交換業者関係)」 / 金融庁「2023年3月24日パブリックコメント回答」
- 金融庁「国会提出法案等」第221回国会・金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律
- 消費者庁「特定商取引法ガイド(通信販売)」
- 消費者庁「景品表示法」不当表示規制
15 まとめ
NFTビジネスの法務では、「NFTを売る」という一つの行為として見るのではなく、トークンの機能、紐づくコンテンツ、著作権・利用許諾、二次流通、金融規制、消費者向け表示を分けて確認することが重要です。特に、NFT取得者が何をできるのか、NFTが譲渡されたときに利用権がどうなるのか、コンテンツへ将来もアクセスできるのかは、技術仕様だけでは決まらず、契約設計が大きな役割を果たします。
また、「NFTだから暗号資産ではない」「収益分配を付けてもNFTなので金融規制は関係ない」といった名称ベースの判断は避ける必要があります。発行前に、権利処理・トークン設計・販売フロー・利用規約・表示内容を一体で確認し、二次取得者へのライセンス付与、マーケットプレイスが担う機能、サービス終了時の対応まで、技術上の仕様と法的説明が一致した状態でローンチすることが、無登録営業、著作権侵害、利用者トラブルを防ぐ基本となります。
NFT・Web3事業の法務設計をご検討の方へ
柳澤法律事務所では、NFT・Web3事業について、トークンの法的分類、著作権・利用許諾、二次流通、マーケットプレイス設計、資金決済法・金融商品取引法上の規制、利用規約・販売表示などに関するご相談を承っています。