IT/FinTech

2026年9月8日

デジタル広告の規制対応:景表法・個人情報保護法を押さえる

SNS・アフィリエイト・Cookie・ターゲティング広告の実務

検索広告、SNS広告、動画広告、アフィリエイト、インフルエンサーマーケティング、リターゲティング広告など、デジタル広告では「表示内容」と「広告配信のためのデータ利用」が同時に問題になります。広告クリエイティブだけを景品表示法で確認しても不十分であり、Cookie、広告ID、閲覧履歴、顧客リスト、計測タグ、SDK等のデータフローまで把握する必要があります。

また、2023年10月からステルスマーケティングが景品表示法上の不当表示として規制され、2024年10月には確約手続、課徴金制度の見直し、故意の優良誤認・有利誤認に対する直罰などを含む改正景品表示法が施行されています。デジタル広告の審査では、広告文言だけでなく、誰が表示内容を決定したか、根拠資料をいつ確保したか、第三者タグが何を送信するかまで一体で管理することが重要です。

先に結論

デジタル広告の実務では、①広告表示の根拠と見せ方、②インフルエンサー・アフィリエイター等への指示と広告表示、③Cookie等のデータ分類と第三者提供、④外部送信・海外広告プラットフォーム、⑤広告代理店・媒体との契約と証拠保存を分けて確認します。「広告代理店に任せた」「Cookieは個人情報ではない」「PR表記を付けた」だけでは、広告主側のリスク管理は完了しません。

1.デジタル広告は「表示」と「データ」の二層で確認する

デジタル広告では、一つのキャンペーンに複数の法令が重なります。景品表示法は、商品・サービスの内容や価格等について一般消費者の誤認を招く表示を規制します。一方、広告配信のために個人情報、Cookie、広告ID、閲覧履歴等を取得・分析・第三者提供する場合には、個人情報保護法が問題になります。さらに、一定のウェブサイトやアプリで第三者タグやSDK等を通じて利用者情報を外部送信させる場合には、電気通信事業法上の外部送信規律も確認が必要です。

確認レイヤー主な論点典型的な実務対応
広告表示優良誤認・有利誤認、ステマ、No.1表示、比較・価格表示根拠資料、表示審査、広告表示、事後モニタリング
広告データ個人情報、個人関連情報、利用目的、第三者提供データフロー、プライバシーポリシー、同意・確認、契約
外部送信タグ・SDK・広告ID・Cookie等の外部送信対象役務の判定、通知・公表・同意・オプトアウト等
広告サプライチェーン広告代理店、ASP、媒体、DMP、計測事業者、海外ベンダー役割分担、再委託、データ利用、監査・削除・事故対応

商品カテゴリーによっては、薬機法、医療法、健康増進法、特定商取引法、金融商品取引法、業法上の広告規制等が重なることがあります。本稿では、デジタル広告に共通する景品表示法・個人情報保護法を中心に整理します。

2.景品表示法――媒体ではなく「一般消費者にどう見えるか」で考える

景品表示法第5条は、自己の供給する商品・サービスについて、実際より著しく優良であると誤認させる優良誤認表示、実際又は競争事業者より著しく有利であると誤認させる有利誤認表示、内閣総理大臣が指定するその他の不当表示を禁止しています。検索広告の短い見出し、SNS投稿、動画内のテロップ、LP、比較表、レビュー表示など、デジタル媒体だから基準が緩くなるわけではありません。

判断では、強調表示、注記、リンク先の説明をばらばらに見るのではなく、一般消費者が広告全体から受ける印象が重要です。ファーストビューで強い訴求を行い、重要な条件をスクロール後や小さな注記に置く設計は、注記が存在するだけで安全になるものではありません。広告→LP→申込画面の一連の表示が整合しているかを確認します。

2-1.「誰が表示したか」――広告主は外注しても表示管理を手放せない

景品表示法上、広告主が表示内容の決定に関与している場合には、外部の広告代理店、制作会社、アフィリエイター等が制作・掲載した表示でも、広告主の表示として評価され得ます。消費者庁は、アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合も、広告主が表示内容の決定に関与したものとして扱い得ると整理しています。

したがって、契約で「法令遵守は広告代理店の責任」と書くだけでは、広告主自身の景品表示法上の責任を当然に消すことはできません。広告主側に、禁止表現、根拠資料、事前承認、モニタリング、修正・削除指示、証拠保存の仕組みを残す必要があります。

3.デジタル広告で特に事故が起きやすい表示

表示類型典型リスク審査ポイント
効果・性能「必ず」「最短」「改善する」等の強い訴求に根拠が対応していない広告掲載前に客観的資料を確認し、対象・条件・期間を合わせる
価格・キャンペーン二重価格、期間限定、無料、割引率、残数等の条件が実態と異なる比較対照価格、適用条件、期間、自動更新等を一体確認
No.1・高評価%調査対象・方法が表示内容と対応しない比較対象、対象者、調査方法、公平性、表示との対応を確認
口コミ・体験談広告主の関与や対価関係が分からず、実績も一般化される広告表示の明瞭化、実績の真実性・典型性、加工の有無を確認
比較広告比較条件を自社有利に選び、全体性能が優れるように見せる比較対象・指標・時点を揃え、重要な不利条件も確認

3-1.効果・性能表示は「掲載後に根拠を作る」では遅い

優良誤認の疑いがある効果・性能表示について、消費者庁は景品表示法第7条第2項に基づき、表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができます。資料提出は原則として要求文書の交付から15日以内であり、新たな試験・調査を始める必要があることは、通常、期限延長の正当な理由にはなりません。

合理的な根拠と認められるためには、客観的に実証された内容であることに加え、広告で示した効果・性能と資料の内容が適切に対応している必要があります。広告運用のスピードを理由に、コピー公開後にエビデンスを探す運用は避け、クリエイティブ承認時点で根拠資料を紐付けて保存します。生成AIが作成した広告文案についても、AIの出力自体が表示の合理的根拠になるわけではありません。

3-1-1.裁判例から見る「表示」と「根拠資料」の対応関係

東京地裁令和5年2月2日判決(令和3年(行ウ)第180号)は、除菌消臭剤について、自社ウェブサイトやYouTube等の動画広告で、室内空間のウイルス・菌を瞬時に99.9%除去できるかのような表示がされた事案です。事業者は、クロラス酸製剤のウイルス・細菌に対する試験やチャンバー試験等を提出しましたが、裁判所は、実生活空間に相当数のウイルス等が浮遊していることや、噴霧粒子が実際に浮遊ウイルス等と接触して表示どおりの効果を発揮すること、「瞬時に」99.9%除去できることまで裏付けるものではないとして、合理的根拠資料とは認めませんでした。

この判決で重要なのは、試験資料が存在するかどうかではなく、一般消費者が広告全体から受ける具体的な印象と、その資料が実証している条件・効果が対応しているかを見ている点です。また、資料提出期限後に新たに提出された資料は、期限内に提出した資料の説明・補足として参酌し得るにとどまり、後から新しい実験結果を追加すれば足りるとはされませんでした。広告公開前に根拠を確保し、表示文言・使用環境・効果発現条件まで対応させる必要があります。

さらに、東京地裁令和6年3月15日判決(令和4年(行ウ)第459号)は、光触媒加工マスクについて、「太陽光、室内光でも」ウイルス、細菌、花粉アレルゲン等を分解するとの表示が問題となった事案です。裁判所は、提出された試験自体の客観性を一部認めながらも、試験時の光照射条件が、広告から一般消費者が想定する室内の最低照度より大幅に強かったことなどから、表示された効果・性能と試験で実証された内容が適切に対応していないと判断しました。

この2件からは、①実験方法が科学的に適切であることと、②その実験結果が広告でうたう具体的な使用場面・条件・効果を裏付けることは別問題であることが分かります。デジタル広告では、短いコピーや動画の演出によって、試験資料が本来示している範囲を超えた印象を与えやすいため、審査時には「この資料から、消費者がこの広告から受ける印象まで本当に言えるか」という順序で確認することが重要です。

3-2.No.1表示・高評価%表示は「調査会社に任せた」では足りない

消費者庁は2024年9月、「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表し、主観的評価によるNo.1表示や「医師の○%が推奨」等の高評価%表示について考え方を示しました。合理的な根拠と評価されるためには、少なくとも、①比較対象の商品・サービスが適切であること、②調査対象者が適切であること、③調査が公平な方法で行われていること、④表示内容と調査結果が適切に対応していることを確認する必要があります。

例えば、実利用者を対象にしていないイメージ調査の結果を「顧客満足度No.1」と表示する、主要競合を外した調査を「業界No.1」と表示する、特定診療科の知見が必要な商品について無関係な診療科を含む医師アンケートを「医師推奨」と表示する、といった設計は問題になり得ます。広告主は調査会社から納品された「No.1」の結果だけでなく、母集団、比較対象、質問文、調査時期、集計方法まで確認すべきです。

4.ステルスマーケティング規制――「PR」と書けば終わりではない

2023年10月1日から、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が景品表示法第5条第3号の不当表示として規制されています。対象はインターネット広告だけではありませんが、SNS投稿、レビュー、動画、アフィリエイト等では、通常の投稿と広告の境界が曖昧になりやすいため特に注意が必要です。

規制対象となるのは、自己の商品・サービスについて表示内容の決定に関与した広告主です。インフルエンサーやアフィリエイターは、広告主と共同して商品等を供給するような例外を除き、ステマ告示の直接の規制対象ではありません。もっとも、広告主が第三者に依頼して投稿させる場合、依頼方法や対価の有無だけで機械的に決まるのではなく、広告主が表示内容の決定に関与したと評価されるかが問題になります。

4-1.広告であることの表示は、見れば分かる位置・内容にする

「広告」「PR」「プロモーション」等の表示を置く場合でも、一般消費者が広告であることを認識できる態様でなければ意味がありません。投稿本文の末尾に多数のハッシュタグと混在させる、リンク先だけに記載する、動画の一瞬だけ表示するなど、広告性が判別しにくい方法は避けます。媒体の表示機能だけに依存せず、投稿本文や動画内でも明瞭に示す方が安全です。

なお、ステマ告示違反それ自体は課徴金納付命令の対象ではありませんが、同じ表示が優良誤認又は有利誤認にも該当する場合は課徴金の問題が生じ得ます。2025年3月には、消費者庁がサプリメントに関するSNS投稿についてステマ告示違反を認定し、措置命令を行っており、インフルエンサー投稿の管理が実際の執行対象になっていることが確認できます。

5.アフィリエイト・インフルエンサー契約では「表示管理」を契約に落とす

アフィリエイト広告やインフルエンサーマーケティングでは、成果報酬や投稿の自由度が高いほど、誇張表現や広告表示の欠落が起きやすくなります。広告主は、契約・運用の双方で表示管理を設計する必要があります。

  • 使用できる訴求、禁止表現、必須注記、PR表示ルールを具体化する。
  • 健康・美容・金融等では、根拠資料の範囲を超える言い換えを禁止する。
  • 広告主の事前承認が必要な媒体・投稿類型と、事後確認で足りる範囲を定める。
  • 投稿URL、掲載日、表示内容、承認履歴、修正・削除履歴を保存する。
  • 広告主又はASPがモニタリングできる権限と、違反時の即時修正・停止・契約解除を定める。
  • 広告主から提供した素材だけでなく、アフィリエイターが独自に追加する体験談・比較・ランキング表示も管理対象にする。

大量の広告を運用する場合は、全件の事前承認だけに依存すると実務が止まります。高リスク表現を事前承認に限定し、その他はガイドライン・研修・定期サンプリング・違反時のエスカレーションで管理するなど、広告量に応じた統制設計が現実的です。

6.2024年施行の改正景品表示法――デジタル広告担当者も押さえる

令和5年改正景品表示法は2024年10月1日に施行されています。デジタル広告実務で特に重要なのは、確約手続の導入、課徴金制度の見直し、故意の優良誤認・有利誤認に対する直罰の新設です。

改正点概要広告実務への意味
確約手続疑いのある表示等について是正措置計画を申請し認定を受ける制度問題発覚後の自主是正を制度的に評価する枠組み。ただし事後対応を前提に広告審査を省略してよいわけではない
課徴金の見直し売上額の推計規定、過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者への1.5倍加算等反復違反のコストが高まるため、表示審査・再発防止の記録が重要
直罰故意の優良誤認・有利誤認に100万円以下の罰金。両罰規定あり「根拠がないと知りながら出す」運用は、行政処分だけでなく刑事罰の射程にも入る

課徴金は優良誤認・有利誤認等について一定の要件の下で問題となり、通常の算定率は対象商品・役務の売上額の3%です。直近10年以内の課徴金納付命令歴がある場合には1.5倍の加算規定があります。ステマ告示違反だけで直ちに課徴金となるわけではない点と区別してください。

7.広告主には「表示管理の仕組み」が求められる

景品表示法は、不当表示を禁止するだけでなく、事業者に表示等の適正管理に必要な措置を講ずることを求めています。消費者庁の指針では、景品表示法の考え方の周知、法令遵守方針の明確化、表示の根拠情報の確認・共有、表示管理担当者の設定、事後的に根拠を確認できる措置、不当表示が判明した場合の迅速な是正等が示されています。

デジタル広告では、クリエイティブが頻繁に差し替わり、媒体ごとの自動最適化やABテストで多数の表示パターンが生まれます。そのため、最終版の画像だけ保存するのでは足りません。コピー、画像、LP、配信条件、掲載期間、媒体、承認者、根拠資料の版、修正履歴をキャンペーン単位で紐付けておくと、調査・苦情・事故対応がしやすくなります。

7-1.生成AI・自動最適化広告でも広告主の確認責任は残る

生成AIによるコピー作成や、広告プラットフォームの自動生成・動的クリエイティブを利用しても、最終的に一般消費者へ表示される内容の適法性確認は必要です。AIが原文にない「業界No.1」「必ず改善」「今だけ半額」等を生成した場合、そのまま配信しないよう、高リスク表現の検知、承認フロー、配信ログの保存を設計します。

8.Cookie・広告IDは「全部個人情報」「全部同意必須」ではない

日本の個人情報保護法では、Cookie等の端末識別子が常に個人情報になるわけではありません。Cookie等が、それ自体又は他の情報と容易に照合することで特定の個人を識別できる場合には個人情報となり得ます。他方、個人情報、仮名加工情報、匿名加工情報のいずれにも該当しない生存する個人に関する情報は「個人関連情報」とされ、Cookie等の端末識別子、閲覧履歴、位置情報等がこれに該当する場合があります。

広告データ考え方主な確認
会員IDに紐付く閲覧・購買履歴自社で特定個人に結び付くなら個人情報・個人データになり得る利用目的、第三者提供、委託、安全管理等
Cookie ID・広告ID個人情報でなければ個人関連情報となることがある提供先で個人データ化されるか、外部送信規律
顧客リスト・メールアドレス識別可能性により個人情報となることが多い広告媒体へのアップロードの法的性質、国外提供等
統計情報特定個人との対応関係が排斥されていれば個人関連情報にも該当しない再識別可能性、作成過程の元データ管理

8-1.ターゲティング広告では利用目的を具体的にする

個人情報保護委員会の通則ガイドラインは、本人から得た閲覧履歴や購買履歴等を分析し、趣味・嗜好に応じた広告を配信する場合には、その分析処理を含め、本人が合理的に予測・想定できる程度に利用目的を特定する必要があるとしています。「サービス向上のため」「マーケティングのため」とだけ記載するより、どのような情報を分析し、どのような広告・推薦に利用するのかが分かる記載にします。

8-2.個人関連情報の第三者提供は「提供先で個人データ化するか」を見る

個人情報保護法第31条は、個人関連情報の第三者提供すべてに一律の本人同意を要求しているわけではありません。提供先の第三者が、提供された個人関連情報を本人が識別される個人データとして取得することが想定される場合に、提供元が、提供先で本人同意が得られていること等を確認する規律です。

例えば、広告事業者がCookie IDや閲覧履歴を提供し、提供先プラットフォームが保有する会員データと結合して個人データとして取得することが想定される設計では、第31条の確認が問題になります。他方、提供先で個人データとして取得することが想定されないなら、同条の確認義務が当然に生じるわけではありません。広告SDK・DMP・データクリーンルーム等では、契約と技術仕様の双方から提供先の利用方法を確認します。

9.電気通信事業法の外部送信規律――Cookie規制とは別の軸で確認する

2023年6月施行の電気通信事業法上の外部送信規律は、一定の電気通信役務を提供する事業者が、利用者の端末に記録された利用者情報を外部へ送信させるプログラム等を送信する場合に、利用者へ確認の機会を与える仕組みです。対象となる場合、通知、利用者が容易に知り得る状態に置くこと、同意取得、オプトアウト措置の提供等の方法を検討します。

外部送信規律は、欧州のePrivacy指令と同一のCookie同意規制ではなく、ターゲティング広告自体を禁止する制度でもありません。また、Cookieを使っていなくても、広告タグやSDK等により端末情報や閲覧URL等を送信させる仕組みであれば対象になり得ます。反対に、すべての企業ウェブサイトに一律に同じ対応が必要となるわけではなく、自社が対象となる電気通信役務を提供しているかを先に確認します。

9-1.「プライバシーポリシー」と「外部送信の表示」は役割を分ける

プライバシーポリシーに抽象的に「Cookieを広告に利用します」と書くだけでは、外部送信規律で求められる送信情報、送信先、利用目的等の説明として不十分になる場合があります。タグマネージャー、CMP、SDK一覧等と連携し、実際に動いている送信先と表示内容が一致するように更新します。

10.広告プラットフォームへの顧客データ提供は「委託」と決めつけない

カスタムオーディエンス、顧客リスト広告、コンバージョンAPI、拡張コンバージョン等では、メールアドレス、電話番号、会員ID、購入履歴等を広告プラットフォームへ送ることがあります。ハッシュ化して送信していても、マッチングのための識別子として利用される以上、「ハッシュ化=匿名加工情報」と扱うことはできません。

個人データを広告プラットフォームへ提供する場合、単純な委託なのか、第三者提供なのか、共同利用なのかは、契約名ではなく、プラットフォームが誰のために、どの目的でデータを取り扱うかという実態で確認します。プラットフォームが自らの広告ネットワーク改善等に独立して利用する範囲がある場合、すべてを広告主の処理委託として整理できるとは限りません。

11.海外広告プラットフォームでは「送信先国」だけでなく処理連鎖を見る

広告プラットフォーム、計測事業者、DMP、CDP等が海外事業者である場合、日本の個人情報保護法第28条による外国第三者提供、同法第31条の個人関連情報提供、現地法、再委託先へのアクセス等が問題になることがあります。ただし、海外サーバーを利用したという事実だけで、すべてのケースが同じ外国第三者提供になるわけではありません。

契約・仕様では、法人としての契約相手、データセンター所在地、サポートアクセス国、サブプロセッサー、顧客データの独自利用、広告モデル改善への利用、保存期間、削除、政府アクセス要求、インシデント通知等を確認します。EUユーザーを対象とする広告では、GDPRやePrivacyルールの適用関係も別途検討が必要です。

12.広告代理店・ASP・媒体との契約で確認する条項

  • 景品表示法、個人情報保護法、電気通信事業法その他適用法令の遵守義務。
  • 広告コピー、画像、LP、投稿等の制作・承認権限と、禁止表現・必須表示。
  • No.1表示、体験談、比較表示等の根拠資料を誰が取得・確認・保存するか。
  • インフルエンサー・アフィリエイターへの再委託・起用条件とPR表示ルール。
  • タグ、SDK、Cookie、広告ID、顧客リスト等のデータ項目・利用目的・送信先。
  • 個人データの委託・第三者提供・国外移転の役割分担と必要な同意・確認。
  • サブプロセッサー、セキュリティ、インシデント通知、監査・情報提供。
  • 違反広告の停止・削除、媒体への連絡、費用負担、損害賠償・補償。
  • 広告・根拠資料・承認ログ・配信ログの保存期間と、契約終了後の協力義務。

広告主側の法的責任をすべて外部委託先へ転嫁することはできませんが、誰が一次審査を行うか、誰が根拠資料を保管するか、違反発見時に何分・何時間以内に停止できるかまで契約と運用を一致させることで、事故の発生・拡大を抑えられます。

13.広告公開前の実務フロー

  1. キャンペーンの商品・サービス、対象者、媒体、広告期間を特定する。
  2. 景品表示法以外の業法・商品別広告規制が重ならないか確認する。
  3. 訴求ごとに、効果・性能、価格、比較、No.1等の根拠資料を紐付ける。
  4. インフルエンサー・アフィリエイトでは広告主の関与とPR表示を確認する。
  5. タグ・SDK・Cookie・広告ID・顧客リストのデータフローを棚卸しする。
  6. 個人情報・個人関連情報・外部送信・国外提供の各規律を判定する。
  7. 広告主、代理店、媒体、ASP、計測事業者の契約上の役割を確認する。
  8. 公開時点のクリエイティブ、LP、根拠資料、承認記録を保存する。
  9. 公開後も自動最適化・投稿変更・アフィリエイト表示をモニタリングする。
  10. 苦情・違反発見時の停止、修正、証拠保全、原因分析、再発防止を実行する。

14.デジタル広告のチェックリスト

  • 強い効果・性能表示について、広告掲載前の合理的根拠資料があるか。
  • 表示内容と試験条件・対象者・期間・商品仕様が一致しているか。
  • 試験条件が、広告から一般消費者が想定する実使用環境と一致しているか。
  • 価格、無料、割引、期間限定等の適用条件がファーストビューでも誤解を招かないか。
  • No.1・高評価%表示について調査設計まで確認したか。
  • インフルエンサー・アフィリエイト投稿で広告であることが明瞭か。
  • 広告代理店等へ表示を丸投げせず、広告主側の承認・監視フローがあるか。
  • Cookie、広告ID、閲覧履歴等が個人情報・個人関連情報のどちらに当たるか整理したか。
  • プロファイリングによる広告配信を利用目的に具体的に反映したか。
  • 個人関連情報の提供先で個人データ化されることが想定されるか確認したか。
  • 電気通信事業法の外部送信規律の対象役務か確認したか。
  • 第三者タグ・SDKの送信項目、送信先、利用目的を実装ベースで把握したか。
  • 顧客リスト広告やコンバージョンAPIのデータ提供を委託と安易に決めつけていないか。
  • 海外事業者、サブプロセッサー、サポート拠点へのデータ移転を確認したか。
  • 広告、LP、根拠資料、承認ログ、配信ログ、修正履歴を保存しているか。

15.よくある質問

Q1.SNS広告やインフルエンサー投稿も景品表示法の対象ですか?

はい。媒体ではなく、事業者が自己の商品・サービスの取引について行う表示か、その内容が一般消費者にどう受け取られるかで判断します。広告主が表示内容の決定に関与した第三者投稿も対象になり得ます。

Q2.「PR」と付ければステルスマーケティング規制は必ずクリアできますか?

必ずとはいえません。一般消費者が広告であると認識できる位置・大きさ・表示時間・文脈で示す必要があります。大量のハッシュタグに埋め込むなど、広告性が判別しにくい表示は避けます。

Q3.ステマ告示違反には課徴金がかかりますか?

ステマ告示違反だけでは課徴金納付命令の対象ではありません。ただし、同じ表示が優良誤認又は有利誤認にも該当する場合には、課徴金の対象となり得ます。

Q4.広告代理店が作った広告なら、広告主は責任を負いませんか?

そのようには整理できません。広告主が表示内容の決定に関与している場合、委託先が制作・掲載していても広告主の表示として問題となり得ます。契約上の補償とは別に、広告主自身の表示管理が必要です。

Q5.Cookieを使う場合、日本では必ず事前同意が必要ですか?

個人情報保護法上、一律に「Cookie利用=事前同意必須」とされているわけではありません。Cookieが個人情報か個人関連情報か、第三者提供があるか、提供先で個人データ化されるか等を確認します。電気通信事業法の外部送信規律が適用される場合も別途確認します。

Q6.プライバシーポリシーに「Cookieを広告に利用」と書けば十分ですか?

必ずしも十分ではありません。個人情報の利用目的は、行動・関心の分析と広告配信が本人に予測できる程度に具体化することが望まれます。また、外部送信規律では送信情報・送信先・利用目的等の説明が別途必要になる場合があります。

Q7.顧客リストをハッシュ化して広告プラットフォームへ送れば匿名情報ですか?

ハッシュ化しただけで当然に匿名加工情報になるわけではありません。プラットフォーム上で既存アカウントとのマッチングに使う場合など、データの識別可能性と利用実態を前提に個人情報保護法上の整理を行います。

Q8.No.1表示は第三者調査会社の結果なら安全ですか?

いいえ。広告主自身が、比較対象、調査対象者、調査方法、公平性、広告表示との対応を確認する必要があります。調査会社の証明書だけを受け取って広告を出す運用は避けるべきです。

Q9.生成AIが作った広告文をそのまま配信できますか?

AIを利用すること自体は禁止されていませんが、表示の真実性や根拠の確認は必要です。AIが根拠のない最上級表現、価格条件、効果保証等を追加していないか、人による承認やルールベースの審査を組み合わせます。

Q10.広告審査は公開前だけ行えば足りますか?

足りません。SNS投稿の追記、アフィリエイターの独自変更、媒体の自動生成・最適化、キャンペーン条件の変更等で表示が変わるため、公開後のモニタリングと停止・修正手順まで必要です。

Q11.合理的根拠資料は、広告公開後に追加で用意してもよいですか?

原則として、効果・性能をうたう表示を行う時点で、その表示内容に対応する合理的根拠資料を確保しておくべきです。東京地裁令和5年2月2日判決(令和3年(行ウ)第180号)は、景品表示法7条2項の資料提出要求後の期限経過後に提出された資料について、当初提出資料の説明・補足として参酌し得るにとどまるとしました。広告公開後や行政調査後に新たな試験を行って根拠を補う運用は避け、公開前審査の段階で表示と根拠資料の対応を確認してください。

主な公的資料

まとめ

デジタル広告の法務は、広告文言だけをチェックする業務ではありません。景品表示法上の表示主体・合理的根拠・ステマ・No.1表示・改正法への対応と、個人情報保護法上のCookie・個人関連情報・ターゲティング広告・第三者提供、さらに外部送信規律や海外広告プラットフォームのデータフローを一つの運用として管理する必要があります。

特に、広告代理店やプラットフォームへ任せたことで広告主の確認が不要になるわけではありません。広告公開前の根拠確認、委託先ルール、データフローの可視化、公開後のモニタリング、証拠保存をセットにし、広告運用のスピードと法令遵守を両立させることが重要です。

ご相談について

弊所では、デジタル広告・SNS運用・アフィリエイト・インフルエンサーマーケティングに関する景品表示法対応、広告審査フローの整備、広告代理店・ASP等との契約レビュー、Cookie・広告ID・顧客リストを用いた広告配信の個人情報保護法対応などについてご相談をお受けしています。広告施策の設計段階から確認することで、公開後の修正や配信停止のリスクを抑えることができます。

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